第1章:出会い
あなた視点
瓦礫と埃の匂いが立ち込める広場。
帝政の崩れかけた街の一角には、戦乱の影が濃く落ちていた。
瓦礫の上に座り込み、鼻をすすりながら、孤児たちは互いに身を寄せ合っていた。飢えと寒さで震える小さな体。目に映るのは、壊れかけた建物と血の跡だけ。
そんな場所で、私も声を張り上げていた。
「……私たちを、助けてほしいです……!」
声は震え、かすれ、何度も途切れた。
だけど周囲の大人たちは冷笑するばかり。無関心の厚い壁に、言葉は跳ね返される。石が飛び、子どもたちの泣き声が混ざり、広場は混乱していた。
その時、視界の端に一人の男が立っているのが見えた。
黒髪を風になびかせ、濃い赤の瞳が私を見つめていた。表情は穏やかで、しかし全てを見透かしているような強さがあった。
大人たちの冷笑も、石を投げる音も、彼だけは動じず、私をじっと見ていた。
「貴方は、面白い子ですね」
低く、丁寧な声だった。
その言葉は、広場の喧騒をかき消し、私の胸に深く刺さった。
誰も聞いてくれなかった私の声を、ただ一人、彼は聞いてくれたのだ。
「え……?」
思わず声を上げてしまう。震えも手のひらの汗も止まらない。
彼は微笑みもしなければ、表情を変えず、ただ私を見ているだけ。
初めて会った人なのに、視線の奥に何か……不思議なものを感じた。
広場の血と埃、瓦礫の臭い、泣き声、喧騒。
そのすべてが遠くなるようで、私はただ、彼の赤い瞳だけを意識していた。
「……この人は、……私のこと……見てくれてるんですかね……?」
問いかけた声は小さく、震えていた。
でも、まだ依存という感覚ではない。ただ……興味と戸惑い、わずかな安心が入り混じった不思議な感覚。
まだ、私の心は自由だ。けれど、その自由の中に小さな種が蒔かれたような、そんな気がした。
男はゆっくり近づき、肩に手を置いた。冷たい手の感触が、心臓の奥まで響いた。
「そうですね。しばらくは様子を見ましょう。貴方がどれだけ生き延びられるか、興味があります」
私は言葉を返せなかった。震えと戸惑いで、ただ小さく頷くしかできない。
その瞬間、世界のどこかで、何かが動き始めた――まだ依存ではない。けれど、この男の存在が、私の心をほんの少し揺さぶったことだけは確かだった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。