私 ── ニグこと二房紅蓮は、
目の前にそびえ立つ建物を見上げて拳を握った。
── 今日の午前2時ごろ。
私は■■美術館の警備にあたっていた。
なんでも、どこからともなく
“ 今日、怪盗が■■美術館の作品を盗みに来る ”
との情報が警察署へ入ったのだとか。
そして、実際に怪盗は盗みにやってきた。
── 数々の悪事を働いているくせに
未だ顔さえ明らかにされていなかった怪盗、怪盗Fがね。
私は勿論、全力を尽くして作品を守ろうとしたし、
彼を捕まえようとした。
だが、結局■■美術館の中で
一番高価な作品を盗まれてしまったし、
彼を捕まえることはできなかった。
警察の方々は
「 怪盗Fの顔が明るみに出ただけでも収穫だった。
むしろ本来は推理が仕事の探偵である君に
事件を阻止しようと動かせてしまって悪かった 」
と言ってくれたが、
作品も守れなかったし、怪盗Fも捕まえられなかった。
完全に、私の負けだった。
さて、今私はショッピングモールに
併設されているホテルに向かっている。
近頃、ここら一帯で連続爆破事件が相次いでいるようで、
その調査をして欲しいんだとか。
…… 正直、この仕事はあまり乗り気ではなかった。
つい今朝、怪盗Fを逃してしまったばかりだから。
きっと警察の方々は、
口先では「 推理だけでいい 」と言いつつ、実際は
捕まえてくれないか期待してくれていたんだと思う。
その期待を裏切ってしまったんだと考えたら
申し訳なくて、悔しくて、
警察の方々に合わせる顔がない。
…… とはいえ、この仕事は前から入っていたし、
今更キャンセルするわけにもいかない。
── そうしないと、私はいずれ、
あの人に探偵としての立場を奪われてしまうから。
私は改めて気合を入れて、
ショッピングモールの中に入った。
ホテルの受付を終えると、私がいつも調査で
お世話になっている警察 ── 黒澤警部が
話しかけてきた。
彼は署の中でも位が高く、肉弾戦に長けている警部だ。
ちなみに私の本名は冒頭でも言った通り
“ 二房紅蓮 ” で、警察の中にも「 二房くん 」などと
呼んでくれる方もいる。
でも、黒澤警部はどうやら漢字が苦手なようで、
初めて会ったとき私の名前 “ 紅蓮 ” が読めなかった。
そのうえ警部は滑舌もあまり良くなくて、
私の苗字 “ 二房 ” をうまく発音できなかった。
そんなわけで、呼びやすいからと彼がつけてくれた
あだ名が “ ニグ ” というわけだ。
二房の “ 二 ” がカタカナの “ ニ ” に似ていたこと、
辛うじて紅蓮の “ 紅 ” は “ ぐ ” と
読めたことからつけたらしい。
私自身も、このあだ名はすごく気に入っている。
本名には、少しだけ苦い思い出もあるからね …… 。
それからメディア等も “ 探偵ニグ ” と言うようになり、
今では私の本名を知らない人もいるんじゃないかと
思うくらいには浸透したあだ名となった。
…… まぁ、今では私の名前なんて
メディアではあまり聞かなくなってしまったけれど。
それと同時に思い浮かぶのは、
さぁーもんこと左門玲斗さんのこと。
彼は探偵デビューしてまだ数ヶ月のくせに、
様々な難事件を鮮やかに解決していて、
国民からの支持も高い名探偵だ。
…… そういえば、何故警察の方々は、■■美術館の件を
さもさんではなく私に任せたのだろう?
もしかしたら、そしたら、
■■美術館の名画は守られたかもしれないのに ──
深い思考に落ちそうになったとき、
黒澤警部の声が聞こえた。
私ははっとして、慌てて反応する。
私は黒澤警部の背中について行きながら、
内心で反省する。
…… ああもうっ! 仕事中に思考に集中していいのは
推理のときだけだって! こんなんだから私は …… っ。
汚名返上をすると心に決めたはずなのに、
早々にやらかす自分に呆れながら、
私はホテルの自室へと歩を進めた。
- ̗̀ ᴛʜᴀɴᴋ ʏᴏᴜ ғᴏʀ ᴡᴀᴛᴄʜɪɴɢ !! ̖́-
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!