あの後適当に駄弁った後に、すっかり元気になったあらんは、
天とにこと七瀬にお礼を言って、忘れ物を取りに行った。
そのあと七瀬の家でゴロゴロする予定だったが、
どうやらランクマ中らしく二人とも追い出された。
そのあとどこに行こうか、住宅街の道を歩きながら喋っていると、
向こうの方から一名の人影が見える。
白く純白な看護服を纏って、杏色の尻尾をゆらゆらと揺らしている。
ただ、いつもは穏やかな口調でゆったり腰な歌風さん、
今日はどうにも慌てている様子で、自慢の服も着崩していた。
向こうから手を振りながら走ってきた歌風さんが、
私たちの目の前で止まって膝に手をつく。
慌てて背中をさする天に、歌風さんが
呼吸を乱しながら「かりがとう……」と小さく例を呟く。
*
歌風さんの言葉に、二人して声をあげて驚愕する。
なんとさっき貧血で倒れたのはあらんだけではなく、
他のところでも貧血でバタバタ倒れているらしい。
衝撃の出来事に呆然としていると、やっと落ち着いたのか
歌風さんが少し背伸びをして着崩した服を着直す。
歌風さんが眉を下げて頭を掻く。
その言葉に反応した二人が、「私たちは知らないなぁ」と
お茶を濁すようにへらへらと笑い合って言う。
そんな二人の様子に首を傾げたものの、
どうやら時間が無いらしく「立ち話もここまでにしよう」と歌風さんがいう。
再度走り出した歌風さんを見送って、
にこと天が以心伝心のように互いを見合って頷く。
そう呟いてまた見合い、二人の口角が上がる。
にやりと笑って、「よーっし!!」と天が片腕を太陽に伸ばし、
もう片方の腕で腰を押さえ、ビシッと決めポーズをする。
ふふん、と鼻を高くして、自慢げに言う天。
二人の和気藹々とした様子に、太陽がそれを味方するように、
日光が強くなって朝日が二人を包んだ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!