スピードを上げてあまねくんがはしりだす。
男の子にしては少し長めの髪の毛と几帳面に巻かれたハチマキがサラリと流れるように揺れた
コーナーで1位との差を縮めつつほとんど僅差でそのバトンは第2走者の手へと渡った
次の瞬間あまねくんからバトンを受け取ったそあらくんはありえないくらいのスピードを上げて走り出した
1位との僅差はあっという間に開いてしまうこれには他の組の1位も驚いているようだった
昔長くスポーツをしていたらしくその足は驚く程に早かった
次にバトンを受け取ったぽちくんはオドオドし少しバランスを崩したものの2位には抜かれず3位とは差が大きく開いていた
2位の生徒も必死に食らいつき
そのままバトンが動く
ぽちくんからバトンを受け取ったあーるんくんはその小柄な身長の割には酷く早く走っていた
背筋をぴんと伸ばした姿勢でこれぞ王道の見本的な走りだなぁと思わされた
そのままバトンが動く
あーるんくんが困りながら思いっきり投げたバトンは空中を少し漂いなぴくんが掴んだ
これはいいのか!?と思うが先にくるみ先生が言ったように何をしてもいい、と言われていたたため特に気にもせずに走った
なぴからひなに繋がれたバトン
そこからは見えなかった
後ろからひなの私の名前を叫ぶ声が聞こえて走り始める
小さな助走
そしてバトンを受け取り大きく1歩踏み出した途端私の体は地に叩きつけられた
驚いて顔を上げると青組のバトンパスのタイミングでみぞおちにバトンが刺さってしまってひどく痛んだのだ
やばいと思い慌ててバトンを拾い上げ必死に走った
でも脳裏に転んだ時の周りの「あー」という声が反響する
ぱっと脳内のモヤが晴れるようになぴの声がこだまする
なぴにしては大きすぎる声で叫ぶ
その声を聞いて私はさらに足に力を込めて走った
しかしバトンは3位のままでまふまふ先輩へと繋ぐ
まふまふ先輩にバトンを繋いだ直後涙が溢れてしまった
周りの生徒のお応援の声が遠くに聞こえる
慰めの声も、優しい声がけも遠くに聞こえる
涙が止まらず裾で拭う
周りに慰められひなに抱きしめられながら待機所に座った
その途端あーるんくんの驚きの声が響いた
目を拭い顔を上げると
そこには2位を走る人をまふまふ先輩が越す姿があった
2位との差は大きく絶対に越えられないと思った
でもまふまふ先輩は超えていた
2位を走りそして天月先輩へとバトンは渡った
その手に渡ったバトンに私たちの目が、視線が集中した
明らかに大きく距離を詰めていく天月先輩
1歩1歩と確実に
それに伴って赤組の声も大きく響く
その声に答えるように
天月先輩はどんどんスピードを上げる
1位も負けずに走る
人生で初めてこんな声が出た
お腹の底から湧き上がるような悔しさ
そして強く打った膝の痛み
掠れた自分の声
大きな心臓の音
いけええええええ!!
赤組のみんなの声と共に
天月先輩は
ゴールした
_
うわあああああああああああ
大きな歓声が響き渡った
天月先輩は1位のメダルを私の首に掛けて大きく笑ってこういった
涙がボロボロ溢れてきた
私の失敗を取り返してくれた先輩方に深々く頭を下げるとまふまふ先輩は頭を撫でてくれた
みんな優しく笑ってくれた
こうして1年目の運動会は幕を閉じた























編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。