家に着いて、玄関を開けるのと同時に先輩からの連絡が入った。
ガチャ
母「お帰り〜。」
つばめ「(ただいま〜)」
母「ご飯出来てるから早く食べちゃいなさい」
つばめ「コクッ(頷く)」
夕飯を食べ、お風呂も済ませ、明日の支度と寝る準備をして先輩からの連絡を確認した。
(こっちから連絡するって言ったのに…)
直「家着いた?」
つばめ「先輩から連絡きたとき、ちょうど着きました笑」
2時間後ぐらいに返事をしたけど、すぐに既読がついた。
直「返事おそーい、つばめから連絡してって言ったのに。」
つばめ「直先輩が先にするから!」
直「直先輩って響き良いね」
つばめ「話そらさないでください!笑」
直「冗談だよ笑」「明日、学校でね。」
つばめ「はい、学校で。」
直「おやすみ。」 つばめ「おやすみなさい。」
そのあとすぐ、眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつもの目覚ましで朝、何度目かの起床。
(やば!ギリギリじゃん!!)
急いで支度をして朝ご飯を食べる時間もなく、すぐに家を出た。
(なんとか間に合った…)
瑠華「つばめ、おはよ〜。ちょっと遅かったね
」
つばめ「(寝坊しかけちゃって…笑)」
瑠華「そうだったの?珍しいね笑」
つばめ「(唯織くんは?)」
瑠華「遅刻して来るってー」
(唯織くんの方がよっぽど珍しいと思うんだけど…)
瑠華「で?昨日どうだったの?笑」
すると瑠華ちゃんがニヤニヤしながら聞いてきた。
つばめ「(どうって?)」
瑠華「もう!とぼけないでよ〜!!先輩といろいろ話したんでしょ?何か進展あった!?」
どこから話せばいいのか、自分でもよく分からないまま瑠華ちゃんに説明した。
つばめ「(別れ際にわざわざホームまで見送ってくれたりして、優しかったよ?)」
もう昨日の時点で好きになりかけたことはまだ、黙っておこうと思った。
瑠華ちゃんは興奮した様子で
瑠華「ねぇ〜つばめ!それってもう、脈アリなんじゃない?!?!」
と言ってくれた。
けど、それだけはないと断言できるくらいには、これといって特別なことは何もなかった。
瑠華「だってさ〜普通そこまでする?いくら女の子でもさ!それ以外にもあたし的には、いろいろと脈アリポイントあると思うけどな〜」
瑠華ちゃんは本当にポジティブな子だ。
私はどうしてもそんな気にはなれない。
先輩がカッコいいのは私だけじゃなく、みんなも思うことだし、現に恋愛経験も豊富だと聞いたばかり。
先輩と一緒に居て浮かれまくってたのは事実だし、好きになりかけたのもそうなんだけど、
そこから先がどうしても、見えない。
講義が始まり、あっという間に時間は過ぎ、
気づけば先輩に会う時間になった。
瑠華「このあと先輩に会うんでしょ?途中まで付いていっていい?笑」
つばめ「(いいよ笑)」
待ち合わせ場所に着いたとき、ちょうど先輩から連絡が入った。
直「もう居る?」
つばめ「(居ますよ。)」
瑠華「先輩どこ!?」
瑠華ちゃんがまた興奮気味に聞いてきた。
先輩がいる少し遠くを指さして瑠華ちゃんに伝えた。
瑠華「あ、ほんとだー!今日も先輩カッコいいね!」
何故か瑠華ちゃんの方が嬉しそうに、私よりキャッキャしていた。
瑠華「それじゃ、邪魔しちゃ悪いしそろそろ行くね!また話聞かせてね〜」
そう言って颯爽と帰っていった。
(何だったの笑…先輩に会いたかったんじゃないのかな?)
それから先輩はキョロキョロと辺りを見回して探しているみたいだったけど、なかなかあの輪の中に入っていく勇気がなかった。
(どうしよう…明らかにスクールカーストの1軍みたいな人達がいる…先輩に会いたいだけなのに…)
直「ねぇ、つばめほんとに居る?見当たらないんだけど。」
と連絡が来た。
つばめ「(居ます…先輩の周りの方々が怖くて近づけません、助けて。)」
直「そういうことか。怖くないから出てきて?」
先輩にそう言われて勇気を出して出ていこうとすると、
直「あ、居た」
と直先輩に見つかった。
直「やっと見つけた。こんなところに居たの?恥ずかしがらなくてもいいのに」
断じて恥ずかしがってた訳ではない。
先輩を含め、周りのお友達?の方々がキラキラして見えたから!
(なんで先輩の周り、美男美女しか居ないんだろう…類は友を呼ぶってこういうことか。ますます怖い…)
直「ほら、行こ。みんなに紹介したいと思ってたんだよね」
(紹介!?聞いてないんですけど!?)
動揺してる間に先輩に1軍さん達の元へ、連れて来られてしまった。
直「紹介する。小森つばめ、1年生。俺の可愛い後輩」
そう言って私の後ろにまわって肩に手を置いた。
翔「あ、その子が最近、知り合った子?」
直「そ。ちなみに喋れないから話すときはちゃんと見てあげて」
翔「直ー…つばめちゃんに何の断わりもなく、それは失礼なんじゃない?」
直「え、まじ?嫌だった?」
私を横から覗き込むように聞いてきた。
つばめ「(全然、大丈夫です。)」
(はぁぁぁ〜…怖い、怖すぎる…!何この状況。
なんか男の人達は優しい顔してくれてる気がするけど、女の人達怖い〜…!!これ絶対、よく思われてないやつだ〜…!)
翔「俺、直の親友の佐野翔です。よろしくね
つばめちゃんって呼んでもいい?」
少しピリついた雰囲気を察してくれたのか、直先輩のお友達が挨拶してくれた。
つばめ「(はい、よろしくお願いします!)」
翔先輩はどことなく、優しい雰囲気をもつ人に見えた。
直「で、こっちが俺らのサークルに入り浸ってる奴ら。」
サークル男友達「ちゃんと紹介してくんねーのかよ!笑」
サークル女友達「…」
(女の先輩だけ何も言ってくれない…!絶対、嫌われてるじゃん…!!帰りたい…!!!!)
翔先輩と1軍さん達で話してる間に
つばめ「(帰ってもいいですか…?)」と、
伺うような表情で直先輩に聞いた。
直「え、なんで?予定でもあった?」
つばめ「(予定はないんですけど、場違いというか…)」
直「あー…女子達?あいつらのことは気にしなくていいよ。いつものことだから」
(あー…少女漫画とかに出てくるイケメンな男の子が可愛い女の子と居ると、「直は皆のものなんだからね!」とか言ってヒロインを虐めちゃうやつだ。ほんとにあるんだな、私はヒロインじゃないけど。)
なんてことを思っていたら話が進み、気が付けばサークルの見学をすることになっていた。
隣に居る先輩の腕を軽く叩き、質問した。
つばめ「(何のサークルなんですか?)」
直「手芸。服作る感じのやつね」
意外だと思った。
確かに先輩はオシャレだし、スタイルも良いし、背も高いけど、自らそういうことをするようなタイプには見えなかった。
直「意外だと思った?」
つばめ「(何で分かったんですか?)」
直「よく言われる。見た目と合ってないって」
(そんなことはないと思うけど…)
直「で、今向かってるのはサークルで使ってる部屋。ちょうど作り終わった衣装があってさ、客観的な意見、聞かせてほしいんだよね」
つばめ「(私なんかでいいんですか?)」
直「つばめだから、信用できる」
何をもって信用できるという言うのだろう、
まだ出会って1週間も経っていないのに。
(知れば知るほど不思議な人…)
サークル部屋に着き、翔先輩と直先輩で作ったという衣装を見せてくれた。
直、翔『せーのっ!ジャーン!!』
直「どう?俺と翔で作った力作」
凄い…
アイドルが着てるようなキラキラとした装飾、
サークルで作ったものとは到底思えないような、まるでプロが作ったような仕上がりだった。
なんて言葉で表せば良いのか分からず、率直な感想を伝えた。
つばめ「(凄いです!めちゃくちゃ…お洋服を見て感動したの初めてです。)」
翔「そんな評価してもらえるとはね〜笑」
直「これでちょっとは自信ついたな」
翔「そうだね。」
つばめ「(大げさです、ただ感想を言っただけなので。)」
直先輩が私の肩に腕を回してきた。
直「分かってないなー、それが大事なんだよ。第三者からの意見って」
直「翔、次の衣装に取り掛かろう」
翔「分かった、必要な生地買ってくる」
直「おー頼む」
それからテキパキと先輩たちは動き始め、私はどうすればいいのか分からずにいると
直「つばめ悪いんだけど手、貸してくれない?俺、ミシンは得意なんだけど手縫いは下手くそでさ」
人並みにできる程度だけど、少しでもお手伝いがしたくて衣装作りに参加することにした。
つばめ「(分かりました。お手伝いさせてください!)」
直「ありがと、助かる。」
先輩が私の頭を撫でた。
1時間くらい時間は進み、少し休憩をとっていたとき部屋のドアがノックされた。
ガラッと扉が開いた。
女子「直ーいるー?」
直「居ない」
女子「居んじゃん、嘘つくなよ笑」
直先輩と同級生なのだろうか、女子の先輩達3人が部屋に入ってきた。
一瞬、直先輩の顔が嫌な表情をしてるように見えた。
(なんかあったのかな…?)
女先輩「あんた誰?」
直「後輩。関係ない」
女先輩「ふーん、まぁいいや。直、ゆみが呼んでるよ」
直「行かない。ってか前にも言った、もう関わりたくないって」
女先輩「でもあんな泣きそうな顔で言われたらさ。分かってんでしょ?ゆみのこと放おっておいたらどうなるか」
直「今回だけだから」
女先輩「それはあたしに言わないでよ。直接言えば?良かったね〜ゆみ」
女の先輩が振り返ると少し俯いた綺麗な女の人が出てきた。
(この人がゆみさん…?)
直「ごめん、ちょっと出てくる。すぐ帰って来るから待ってて」
私の頭にポンと軽く手を置いて部屋から出ていった。
(いつもより声が低かった気がするけど…気のせいかな?)
黙々と作業を進めていると、程なくして翔先輩が帰ってきた。
翔「ただいま〜。ってあれ?直は?」
つばめ「(なんか女の先輩達に連れられて出ていっちゃいました。)」
翔「あーまじか…」
翔先輩も何か知ってるようだった。
翔「何か言ってなかった?」
つばめ「(ゆみ?とか言ってました。)」
翔「あー…まずったな…」
つばめ「(何かあったんですか?)」
翔「いや、俺からあいつのこと話すのは良くないと思うから気になるようだったら直に聞いてみて。それとこれ、いろいろ買ってきたよ」
詳しいことは何も話してはくれなかったけど、何となく先輩達が親友なのは分かった気がした。
(これ以上は聞くなってことかな…)
つばめ「(お菓子、ですか?)」
翔「あ、嫌だった?」
つばめ「(いえ。嬉しいんですけど何でかなって)」
翔「つばめちゃん暇してるかなって。ぼーっと見てるのもなんでしょ?いろいろ買ってきたから一緒に食べれたらなって。」
つばめ「(ありがとうごさいます。)」
翔先輩は気遣いができる優しい人、見た目通りのやわらかい人だと感じた。
翔「俺、これからバイトでさ。つばめちゃん1人になっちゃうよね、どうする?一緒に帰る?」
つばめ「(直先輩に待っててと言われたので待ってます。)」
翔「でもいつ帰ってくるか分かんないよ?」
つばめ「(大丈夫です!)」
翔「そっか、何かあったら連絡してね。あんまり遅くならないうちに帰るんだよ?じゃあね、つばめちゃん」
つばめ「(はい、ありがとうございます。)」
翔先輩が帰ったあと、特にやることもなくなり買って置いていってくれたお菓子を食べていた。
(お菓子を食べても暇つぶしにはならないよね〜…)
あれから1時間ほど経っても先輩は帰って来ず、スマホで暇つぶしになるようなことはしてみたものの、飽きてしまった。
(なんか、眠くなってきちゃったな…)
私はそのまま机に伏せて眠りについた。
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ふと誰かに頭を撫でられてるような感覚がして重たい瞼を開けた。
直「ごめん、起こした?」
(直先輩…?)
気づけば時刻は午後4時を指していた。
直「ごめん、すぐ戻るって言ったのに。待たせた、ごめんな」
つばめ「(そんなに謝らないで下さい!待っててと言われたので待ってただけです😊)」
直「一緒に帰りたかった?」
つばめ「(はい!)」
何でこうも私の考えていることが分かるのかと思うのと同時に、帰るという選択肢が自分の中で無かったことに気づいた。
直「素直だな、つばめは」
先輩は悲しい顔をしていた、少し疲れているようにも見える。
私は思わず先輩に触れたくなった。
立っていた先輩に私と同じ目線くらいになれるよう、しゃがんでもらうと
先輩のサラサラとした髪に触れた。
それからときどき私にするように先輩の頭を優しく撫でた。
何故そうしたくなったのかは自分でもよく分からない。
でも先輩の悲しい顔は見たくなかった。
直「っ…!つばめ?どうした…?髪にゴミでも付いてた?」
先輩が照れ隠しに言ってることが分かった。
(直先輩でも照れることあるんだ…)
直「ほんとに…なんで、ずっと黙ったまま頭撫でてんの…?」
そう言いながら先輩の綺麗な顔がどんどん赤くなっていく。
つばめ「(元気がないように見えたので、先輩が私にしてくれることをしただけです。)」
直「俺、そんなに頭撫でてる?」
つばめ「(撫でてます。)」
直「まじか笑」 つばめ「(まじです笑)」
直先輩が笑顔を見せた。
すると先輩が私の肩までトンと前に倒れてきた。
驚いた私は何かあったのかと慌てていると
直「ごめん、ちょっとだけ、このままで居させて」
先輩があまりにも近い距離にいてドキドキと心臓がうるさくなった気がした。
何を話すわけでもなかったけど、行き場のなかった私の手で先輩の背中を擦った。
しばらくすると先輩は
直「もう大丈夫、ありがと」と言った。
お礼を言われるようなことは何もできていないけど、先輩がいつもの調子に戻ったようで
(これで良かったのかな…?)
と思った。
直「そろそろ帰るか。」
つばめ「コクッ(頷く)」
大学から出て駅まで歩いてる途中、風が吹いて先輩から甘い香りがした。
部屋にいるときは気づかなかったけど、いつもはしないその香りが妙に気になった。
直「つばめ?どした?」
つばめ「(なんでもないです。)」
直先輩はいつもなら爽やかな柑橘系の香りがするのに、こんなに甘い香りがすることの意味が、分かってしまったようで。
少し複雑な気持ちを抱いた。
つばめ「(もうここで大丈夫です。送ってくれてありがとうございました。)」
直「ホームまで送る」
つばめ「(ほんとに大丈夫です、それじゃ!)」
その場から逃げるように私は駅まで走った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。