つばめと2人で衣装づくりをしてるとき、部屋の扉が開いた。
女友達「直ーいるー?」
嫌な予感がした。
直「居ない」
女友達「居んじゃん、嘘つくなよ笑」
ゆみの友達がわざわざ来たということの意味が分かって、少し嫌な気持ちになった。
女先輩「あんた誰?」
直「後輩。関係ない」
女先輩「ふーん、まぁいいや。直、ゆみが呼んでるよ」
直「行かない。ってか前にも言った、もう関わりたくないって」
女先輩「でもあんな泣きそうな顔で言われたらさ。分かってんでしょ?ゆみのこと放おっておいたらどうなるか」
頼むから今だけは邪魔してほしくなかった。
(最悪…)
直「今回だけだから」
女友達「それはあたしに言わないでよ。直接言えば?良かったね〜ゆみ」
その場から離れるのは気が引けたけど、行かないという選択は取れなかった。
直「ごめん、ちょっと出てくる。すぐ帰って来るから待ってて」
と、つばめに伝えた。
心配した表情をしてた気がして部屋から出た後すぐ、連絡を入れた。
直「大丈夫、すぐ戻る。」
すぐ戻れるはず、だった。
ゆみに腕を引かれて空いてる部屋に連れて行かれた。
扉を閉められて鍵をかけられた。
直「友達は?いいの?」
ゆみ「うん。直のこと呼び出してもらっただけだから」
直「そっか」
ゆみとは高校時代から大学1年まで付き合ってた元カノ。
でも男癖が酷くて大学1年のとき別れた。
思い返せば、俺も大概だったけど本気だったんだと思う。
ゆみ「直、もう1度やり直せない?」
直「無理。」
ゆみ「はやっ!ちょっとは検討してくれても…」
直「気になってる子、居るから」
ゆみ「その子って、さっき一緒に居た子?」
直「うん。」
自慢じゃないけど、恋愛で困ったことは無かった。
それなりにモテたし、女の子ともそれなりに付き合った。
でも自分から告白したことは無くていつも相手からの告白を受けただけ。
ゆみともそうだった。けど、少し違った。
それまでよりもだいぶ、楽しかった。
思い返せば、それなりに幸せだったんだと思う。
ゆみ「あたし、直と別れて気付いたの。やっぱりあたしには直しかいないんだって。もう浮気もしないし、男癖の悪さも直したから。だから…」
直「それで?俺と付き合いたいの?」
ゆみは初めて会ったときみたいに、顔を赤くしていた。
ゆみ「うん、ダメ?」
もうあの頃には戻れない。
直「ごめん。あの子のこと大事にしたい」
ゆみ「好きなの?」
気にはなっている。
けど好きか、と言われるとよく分からない。
初めての感覚だった。
直「わかんない。けど毎日、会いたいとは思う」
ゆみ「何それ…笑」
ゆみは苦しそうに笑っていた。
ゆみ「じゃあ今日だけ、今だけ…彼氏になって」
直「なんで?」
ゆみ「なんでも。そしたらもう直に会ったりしないから、ね?」
なんでか無性に、嫌だと思った。
直「断ったらどうなんの?」
するとゆみはスマホの画面を見せてきて、つばめの連絡先を持っていた。
直「なんでつばめの連絡先知ってんの?」
ゆみ「仲の良い男の子に聞いちゃった!」
そう笑ったけど無理してるのが分かった。
(仲の良い?あー唯織とかいう子か。)
ゆみ「その子に聞いたらすんなり教えてくれてさ?その唯織くんって子、つばめちゃんのこと好きなんだって。それで直が居ると何かと邪魔だからって教えてくれたの!」
直「それって脅し?」
ゆみ「そ!今あたしと一緒に居てくれないと、直のあんなことやこんなこと、全部バラしちゃうよ?いいの?」
直「いいよ。バラせば?」
ゆみ「え、なんで?だって直、女の子取っ替え引っ替えしてたことバラされてもいいの?」
直「うん。ちゃんと俺からも正直に話す」
つばめと話せるなら何も怖くない、と思った。
ゆみ「何それ。いいじゃん、ちょっとくらい…」
直「先に振ったのはゆみじゃん」
もう、適当に生きてた頃には戻りたくない。
直「用が済んだなら俺、帰るよ」
部屋の扉に向き直ったとき腕を引かれた。
ゆみ「待って。」 直「なに?」
ゆみの方向を向いた途端、キスをされた。
ゆみ「直、ほんとに好きなの。これで最後にするから…」
なんとも思わなかった。
はやくつばめのとこに戻りたい、としか考えられなかった。
それから結局、引き止められ続けて1時間以上
つばめを待たせてしまった。
(まだ居るかな…)
急いで部屋まで戻って扉を開けると部屋の片隅の机の上で、つばめが寝ていた。
(寝てる…)
寝息を立てて眠るつばめを見て、そっと頭を撫でた。
するとゆっくりと目を開けた。
直「ごめん、起こした?」
少し眠たそうにあくびをしながら、首を横に振った。
直「ごめん、すぐ戻るって言ったのに。待たせた、ごめんな」
つばめ「(そんなに謝らないで下さい!待っててと言われたので待ってただけです😊)」
直「一緒に帰りたかった?」
つばめ「(はい!)」
つばめは表情豊かに言った。
普段からそうだけど言葉を話せない分、表情や文章で気持ちを伝えてくれようとしてるのが分かる。
愛おしいと思った。
直「素直だな、つばめは」
すると急にしゃがむよう手で合図をされて、
つばめと同じ目線になって疑問に思っていると
髪を優しく触られた。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
今度はそのまま手を移動させて頭を撫で始めた。
直「っ…!つばめ?どうした…?髪にゴミでも付いてた?」
妙に気恥ずかしくなった。
直「ほんとに…なんで、ずっと黙ったまま頭撫でてんの…?」
(今、絶対、顔赤い)
つばめ「(元気がないように見えたので、先輩が私にしてくれることをしただけです。)」
直「俺、そんなに頭撫でてる?」
つばめ「(撫でてます。)」
直「まじか笑」 つばめ「(まじです笑)」
こんな時間がずっと続けばいいのに、そう思った。
気づけば、つばめの肩に倒れるようにもたれかかってた。
なんとなく焦ってて、心臓の鼓動が激しくなったのが、伝わってきた。
直「ごめん、ちょっとだけ、このままで居させて」
そっと触れるように手を伸ばして、俺の背中を擦ってくれた。
背中から伝わる小さな温もりが冷めないでほしいと、願った。
直「もう大丈夫、ありがと」
つばめから離れると、後ろから夕焼けの日が差していて綺麗だと思った。
直「そろそろ帰るか。」
頷いたのを見て、2人で部屋を出た。
それから少し無言の時間が流れて、なんとなくつばめの方を見ると
何か、考え事をしてるように見えた。
直「つばめ?どした?」
思わず、声をかけた。
つばめ「(なんでもないです。)」
距離を感じて不思議に思ったとき
つばめ「(もうここで大丈夫です。送ってくれてありがとうございました。)」
隣を歩いていたつばめがそう言った。
少しでも長く居たいと思って
直「ホームまで送る」と言うと、
つばめ「(ほんとに大丈夫です、それじゃ!)」
そう告げて走って帰っていった。
「つばめ!」
と呼ぼうとしたけど止めた。
呼んでも振り向いてもらえない気がしたから。
家に着いてからも何がいけなかったのかと
つばめのことをぐるぐると考えてた。
帰り際に見せた切なそうな顔が忘れられなかった。
ふと洗濯しようと思い立ったとき
さっきまで着ていたカーディガンから甘い匂いがした。
(これだ。)
嫌な思いをさせてしまったと思った。
スマホを取り出してつばめとのトーク画面を開いた。
でもなんて説明すればいいのか分かんなくて止めた。
(明日、大学で会ったら謝ろ)
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次の日、朝から探したけど会えなかった。
あれから連絡もない。
家に翔を呼んで話を聞いてもらうことにした。
翔「直〜どうした?なんかあった?」
翔に昨日のことを全部、話した。
翔「あー…それは良くないかもね。」
直「んー…」
翔「でもさ正直、つばめちゃん直のこと相当、気になってると思うよ?」
直「は?」
翔からそんなことを言われると思ってなかった。
翔「え、まさかの自覚無し?笑」
直「うん」
翔「だってさ、気になってなかったら直のこと触ろうとも思わないし、香水の匂いなんか気になんないでしょ」
翔「ぶっちゃけ、直は気づいてると思ってたけど」
考えたことがなかった。
会いたいと思ったから会ってたし、つばめも嫌な感じじゃなかったから。
翔「で?直はどうなの?」
直「どう?」
翔「鈍いなあ〜。お前、そんな鈍感だったっけ?直はつばめちゃんのこと、好きなの?」
直「わかんない。けど毎日会いたい」
今日、つばめの顔が見れなくてかなりショックを受けてる自分がいた。
翔「それ、好きじゃん笑」
直「そーなの?」
翔「そうだよ!笑 まぁ直にとったら自分から初めて恋したみたいなもんだもんね」
翔に言われて初めて、分かった気がした。
(俺、好きなのか)
直「分かった、翔ありがと。もう帰っていいよ」
翔「は?ちょ…押すなよ!俺まだ10分くらいしか居ないんですけどー?!」
強引に翔を部屋から追い出した。
つばめに連絡しようと思ってトーク画面を開いた。
相変わらず何も来てなかったけど
直「つばめ、明日会える?」と送った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。