第5話

第五話 二階へ
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2023/03/02 14:40
私が何回も呼びかけているのに、貴方は全く振り向いてもくれない。少し寂しくなった。だから私も貴方のように、変化を望んだ。でも貴方のようには出来なかった。私は貴方が非日常を望んだように、私も貴方が私に気付いてくれることを望んだのだけど、叶わなかった。私には出来なかった。仕方がないから諦めようかと思ったんだけど、貴方が二階へ行こうとするから、焦った。二階は駄目。あの場所は行っては駄目。あそこは私の部屋。私の部屋には、たくさんの秘密がある。今までこのお城へやってきた人の数や、人種、性格とかの情報を入れてあるの。私以外が見たら、その人達のプライバシーの損害になってしまう!
私は貴方の目の前に躍り出て、通行を塞ごうとした。通せんぼした。(これで通れないでしょ。私が邪魔になっているから通れないハズ!)そう思った矢先、私に信じられないことが起きた。貴方は私をすり抜けて、先へ進んでいってしまった。私は困惑した。今までにこんな事はなかった。私は幽霊みたいな存在になってしまったのかな。とにかく貴方は私の部屋に向かっている。はやく止めないと、あの人たちに迷惑をかけてしまう!
何回も貴方に通せんぼしたのに、貴方は私に気付くことなく、私をすり抜けて、進んでいってしまう。やっぱり幽霊になっちゃったのかな。私は段々焦ってきた。あの人たちのプライバシーよりも、自分の身に起こったことの方に気持ちが動いている。どうして、こうなったのか。分からない。貴方が来る前から?それとも貴方が来てから?それか、私は初めから幽霊のような存在だったのか。いずれにせよ、私は不安で仕方がない。貴方が部屋に行く事もそうだけど、私自身に起こった事への不安が大きい。
そうこうしてる間に、貴方は部屋の中へ行ってしまった。「あ、ちょっとそこに行っちゃダメだって!」貴方に呼びかけても無駄だと知っていても、私は声をあげる。
貴方に気づいて欲しい
その一心で私は声をあげて、貴方を部屋に入れるまいと、必死だった。腕を掴んでやりたかったけど、やっぱり、すり抜けちゃう。結局貴方は、部屋の中に入ってしまった。私の努力は無駄だった。貴方は部屋の中をあちこち見回していたけど、興味が無いのか、すぐに部屋から出ていった。そして貴方は、城の外へ出ていこうとした。私はそれに気づいて、本日三度目の焦りを覚えた、

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