第2話

朔日目。
331
2025/07/13 23:14 更新


時貞翁がご逝去なされたという電報があったのは

妙に赤暗い日没の時だった。
上司
なっ…!そ、それは…心中、お察しします
あなた
( 時貞翁がご逝去なされた… )



時貞翁ときさだおうとは、私達帝国血液銀行の取引先会社の一家。



龍賀りゅうが家」の当主であった人だ
水木
あっ、おい!あなたの名字!


同僚の水木がバタバタと駆け寄ってくる。

彼は取引先社長、であり時貞翁の義理息子龍賀克典りゅうがかつのりと仲良くしている。

龍賀家とは関わりがある人物だ。

水木
聞いたか?時貞翁がご逝去なさったそうだ
あなた
ああ。聞いたよ。非常に残念だ

時貞翁は血清「エム」で大きな業績を遺した人物だ。
あなた
血清M…。
水木
そう、そうだ!その事についてだ。

水木が真剣な顔で隣のデスクに座った。

資料等をまとめ小綺麗に机の端に寄せる
水木
よければあなた、俺と一緒に龍賀家に行ってくれないか

一瞬思考が止まる。どういうことだ?
あなた
待て、水木。我々は平社員だ。龍賀家に行くとなると…

それに龍賀家というと、というかあの村は…

言いかけたところで水木がバッと頭を下げた
水木
頼む、あなた。彼処は危険なところだと聞いた。
だがこの好機チャンス逃すのは勿体ないと思ったんだ。

成程こいつは上司に対する反骨心も兼ねているのだろう
あなた
…しょうがないな。今からか?
水木
あぁ、助かるよ…。今から社長に直談判するつもりだ
あなた
ハハ!そりゃ良いや


言いながらデスクから腰を上げる。

少し腰を反らすとポキポキと音が鳴った

少し歩き、二度ノックをして社長室に入る


上司
コ、コラ!水木君にあなたの名字君、失礼じゃあないか!
社長
大丈夫だ、入れなさい

私と水木がお辞儀をし社長室に入る。

静かに戸を閉じて、変に血みたいな色をした窓からの光を受け止めた。

水木
失礼致します。単刀直入に申し入れます。
時貞翁、ご逝去なされたとか

部長が少し面食らったような神妙な顔をした。

社長の方を見たが社長はどこを向いているのか分からなかった。

部長は困ったようにこちらを見返し、静かにため息をついた。

上司
ああ。そうだ…だが、だったらどうした?
あなた
わたくしどもが龍賀家に、会社を代表として入って参ります


水木の方をちら、と見る。

彼はこちらを少し見返し、背広の袖を巻くって腕時計を見た

水木
今から出て夜行に乗れば、明日の昼には着きます


そして二人して頭を下げた

あなた
お願い致します。我々は克典社長にも良くして頂きました。
この時くらい、御悔やみの言葉をと…
水木
どうか、お願い致します
上司
…と、申しておりますがどう致しましょうか
社長
大丈夫だ、行かせてやれ…。
あと水木君、あなたの名字君「アレ」の方も
水木
無論、探って参ります
あなた
ええ


ありがとうございますと感謝を述べ一礼し社長室から出ていく
 





扉を締め切る直前部屋の中から







上司
ですがあの村に行って帰ってきたものは…














そう聞こえたが、



聞こえなかった。そう言い聞かせて扉を閉じた

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