五条はレイを外に連れ出し、たくさんの場所を紹介していました
五条は一つ一つの場所をまるでお気に入りのコレクションを紹介するように
丁寧に話して聞かせた
五条は振り返りレイに満面の笑みをむけた
その瞬間、レイの胸の奥にある中央処理回路が予期せぬノイズを検知した
レイは自分の顔を触った
顔が、じんわりと熱い
五条はレイの顔を覗き込んだ
五条の六眼は先ほどから不規則なさざなみのように揺れているのを
正確に捉えていた
五条がレイに訊ねた瞬間、レイは立ち止まり無表情な瞳で五条を見つめた
レイにとって「選択」と言う概念は存在しない
自分という道具を一晩のうちどこに収納しておくか。
その判断を下すのは常に「所有者」の役割だった
レイは一歩、五条に歩み寄った
その論理はあまりに冷徹で、けれど盲目的だった
結果、五条はレイを自分の部屋に案内した
五条は柔らかい笑顔でレイに言った
レイは少し止まった後
レイは淀みなく応じ、真っ白なシーツが整えられたベッドへ潜り込んだ
しかし…
数時間が経過した頃
レイの瞳が暗闇の中でカチリと音を立てるように開いた
レイは音もなく上体を起こし、膝を抱えてベットの上に座り込んだ
『睡眠』
それは、所有者を守るための視覚、聴覚、呪力感知そのものを
全て遮断する行為。
周囲に敵対者がいないと判断されたからこその命令だが、
レイにとってそれは「隙を作るだけ」の非合理的な機能であり
自力でそれを行うことは不可能に近かった
(機能停止によるメリット、未だ検出できず
命令遂行のため一時的意識を落としたものの、思考ログを継続)
レイはソファで寝ている五条をじっと見つめた
六眼を持ち、常に世界を見通しているはずの彼が
今は無防備にただの「人間」としてそこにいた
その姿を見た瞬間、レイの頭にはよぎってしまった
今なら、誰にも見られず排除できる…と
レイの表情がわずかに揺らいだ
それは感情を持たないはずの人形が見せた
「悲しみ」に酷似した表情だった
かつての所有者たちは、レイに「眠れ」など言わなかった
「動け」「殺せ」「守れ」。
動画に休息を与える所有者はいなかった
壊れれば修理し、使い物にならなくなれば棄てる
それが彼女の世界の全てだった。…はずだったのに
彼女は声にならない声で、彼の名前を呼んだ
もし自分が人間のように眠り、夢を見れる日が“戻って来れば”
寝返りを打った五条は、その視線に気づくこともなく、ただ幸せそうに眠り続けていた
レイは再びベッドの中に身を沈め、重い瞼を閉じた














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。