山積みの段ボール箱を 部屋の隅に寄せて、
ピカピカの白い床に ごろんと寝転がる。
鼻を爽やかに掠める ”新しい家” の匂い。
オッパは 今年で22歳、俗に言う就活生になる。
それを機に ひとり暮らしを始めると言うので、
今日はその引越しの手伝いに来た。
白い天井を見つめながら、思い出す。
そういえば、こんな色だったかな。
保健室の天井も。
一瞬 険しくなったオッパの表情が、
行かないと聞いた途端 すこし緩んだのを、
見て見ぬふりするように また天井へ視線を戻す。
高校3年生の、冬。
たしかクリスマスくらいの時期。
そこから卒業までの 約3ヶ月間。
私は、学校に行けなくなった。
毎晩ベッドの中で「明日 学校だ」と、
またあの2人を見なきゃいけないと考えるたび、
呼吸がうまくできなくなって、
治りかけていた 病状が悪化し始めて、
いつからか。
オッパと私の間で、
高3のときの話が
暗黙のうちに タブーになった。
ハガキが来たときも、
ユアからその名前が出たときも、
今、この瞬間も。
私はずっと、背を向け続けている。
彼との1年間から。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。