第11話

day16. Step
217
2026/07/26 03:45 更新




暖かい風が、カーテンをふわりと揺らした。


キッチンから聞こえるフライパンの音。


規則正しく響くその音で目覚めるのも、もう慣れた。

Yoongi
Yoongi
   起きたか。  
Taehyung
Taehyung
   ……おはよう、   

ヒョンは振り返らず、スクランブルエッグを皿へ移す。


Yoongi
Yoongi
   顔洗ってこい   
Taehyung
Taehyung
   うん。  

洗面所へ向かい、ふと鏡を見る。


昨日ここで結んで貰ったネクタイ。


口角が上がるのを誤魔化せなかった。




______________________




朝食を終えて、ヒョンは腕時計をはめる。


Yoongi
Yoongi
   今日は少し遅くなる。  
Taehyung
Taehyung
   ……そっか。気をつけてね   

玄関まで見送る。


靴を履くヒョン。


Yoongi
Yoongi
   今日も留守番頼んだ。  
Taehyung
Taehyung
   うん。  
Yoongi
Yoongi
   じゃ、  

ドアノブに手がかかる。


また何も言えずに、小さく手を振る。


でもヒョンはそれで十分だと言うように、


小さく頷いた。


________________________




お昼過ぎ。


洗濯物を取り込んで、畳み終えた頃。


♩ ピンポーン


突然のチャイムに肩が跳ねる。
Taehyung
Taehyung
   ……?   
恐る恐るインターホンを見る。


画面には、帽子を被った配達員さん。


ㅤ⠀
   お荷物でーす   

荷物?僕に?


いや、ヒョンか。


どうしよう……


出ても、いいのかな。


数秒迷ってから、深呼吸を一つ。


玄関を開ける。
Taehyung
Taehyung
   こ、こんにちは。  
ㅤ⠀
   こんにちは。宅配便です   

優しい声だった。
ㅤ⠀
   こちらお荷物です。受領お願いします   

渡された端末。画面には、名前を書く欄。


ヒョンの荷物なら、えっとユンギ、ユンギ……


ミン、ユンギだから……


書き慣れない名字を画面になぞる。


ㅤ⠀
   はい、ありがとうございました。  
Taehyung
Taehyung
   こちらこそ、ありがとうございます……   

荷物を抱え、玄関を閉める。


……できた。


人とちゃんと話せた。


荷物も受け取れた。


それだけなのに、胸の奥が少しだけ温かくなる。


ふと玄関を見る。


少しだけ、本当に少しだけ。


外へ出てみよう


そう思えた。


靴を履いて、ドアノブへ手を伸ばす。


カチャ。


ゆっくりと扉が開く。


生暖かい風が僕の頬を撫でた。


日差しが眩しくて、目を細める。


一歩。


コンクリートへ足を乗せる。


……これだけ。


今日はこれだけでいい。


家の前を少し歩いて、深呼吸をして、また家へ戻る。


玄関を閉めると、思わず小さく笑ってしまった。


Taehyung
Taehyung
   外、出れた……   

お使いに行きたいと言った以来の外。


誰に言う訳でもなく呟いたその声は、


小さいけれど確かだった。



________________________




もう完全に日が暮れた頃。


ガチャ。


玄関の鍵が回る音がした。


Yoongi
Yoongi
   ただいま。  

僕はぱたぱたと玄関まで走る。


何も言えなかったのに、


ヒョンは僕が走ってくるのを見て少しだけ目を細めた。


こそばゆい。
Taehyung
Taehyung
   ……今日、  
Yoongi
Yoongi
   どうした?   
Taehyung
Taehyung
   荷物、ちゃんと受け取れた。  

ヒョンは一瞬だけ目を丸くする。
Yoongi
Yoongi
   そうか。ありがとうな   
Yoongi
Yoongi
   悪ぃ、今日だったか。  
Taehyung
Taehyung
Yoongi
Yoongi
   届くの。  

僕は首を傾げる。


なんでヒョンが謝っているのか分からなかった。


ヒョンは小さく息を吐いて、
Yoongi
Yoongi
   時間指定すりゃ良かった。  

ぽそっと、それだけ呟いた。


Taehyung
Taehyung
   だ、大丈夫だったよ……?   

僕そんなに頼りないかな、


何だか拗ねてしまう。


ヒョンは荷物を見つめる。


傷一つない箱。


そして僕を見つめる。
Yoongi
Yoongi
   変なこと、なかったか。  
Taehyung
Taehyung
   ……え?   
Yoongi
Yoongi
   困らされたり。  
Yoongi
Yoongi
   怖い思いは。  

やっと理解した。


勝手に拗ねて、ごめん。


でも僕こんな風に優しくされたこと、なくて。
Taehyung
Taehyung
   ううん。凄く優しい人だった。  

その言葉に、ヒョンは頷く。
Yoongi
Yoongi
   ……そうか。  

ヒョンはどこか、安心したように見えた。


そして荷物を持ち上げながら、


Yoongi
Yoongi
   次は俺がいる時間に届くようにする。 
Taehyung
Taehyung
   なんで?もう大丈夫……   

ヒョンは少しだけを目を僕から逸らす。
Yoongi
Yoongi
   ……念の為だ。  

それ以上は言わない。


でも僕には十分過ぎるくらいに伝わった。































To be continue __

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