暖かい風が、カーテンをふわりと揺らした。
キッチンから聞こえるフライパンの音。
規則正しく響くその音で目覚めるのも、もう慣れた。
ヒョンは振り返らず、スクランブルエッグを皿へ移す。
洗面所へ向かい、ふと鏡を見る。
昨日ここで結んで貰ったネクタイ。
口角が上がるのを誤魔化せなかった。
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朝食を終えて、ヒョンは腕時計をはめる。
玄関まで見送る。
靴を履くヒョン。
ドアノブに手がかかる。
また何も言えずに、小さく手を振る。
でもヒョンはそれで十分だと言うように、
小さく頷いた。
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お昼過ぎ。
洗濯物を取り込んで、畳み終えた頃。
♩ ピンポーン
突然のチャイムに肩が跳ねる。
恐る恐るインターホンを見る。
画面には、帽子を被った配達員さん。
荷物?僕に?
いや、ヒョンか。
どうしよう……
出ても、いいのかな。
数秒迷ってから、深呼吸を一つ。
玄関を開ける。
優しい声だった。
渡された端末。画面には、名前を書く欄。
ヒョンの荷物なら、えっとユンギ、ユンギ……
ミン、ユンギだから……
書き慣れない名字を画面になぞる。
荷物を抱え、玄関を閉める。
……できた。
人とちゃんと話せた。
荷物も受け取れた。
それだけなのに、胸の奥が少しだけ温かくなる。
ふと玄関を見る。
少しだけ、本当に少しだけ。
外へ出てみよう
そう思えた。
靴を履いて、ドアノブへ手を伸ばす。
カチャ。
ゆっくりと扉が開く。
生暖かい風が僕の頬を撫でた。
日差しが眩しくて、目を細める。
一歩。
コンクリートへ足を乗せる。
……これだけ。
今日はこれだけでいい。
家の前を少し歩いて、深呼吸をして、また家へ戻る。
玄関を閉めると、思わず小さく笑ってしまった。
お使いに行きたいと言った以来の外。
誰に言う訳でもなく呟いたその声は、
小さいけれど確かだった。
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もう完全に日が暮れた頃。
ガチャ。
玄関の鍵が回る音がした。
僕はぱたぱたと玄関まで走る。
何も言えなかったのに、
ヒョンは僕が走ってくるのを見て少しだけ目を細めた。
こそばゆい。
ヒョンは一瞬だけ目を丸くする。
僕は首を傾げる。
なんでヒョンが謝っているのか分からなかった。
ヒョンは小さく息を吐いて、
ぽそっと、それだけ呟いた。
僕そんなに頼りないかな、
何だか拗ねてしまう。
ヒョンは荷物を見つめる。
傷一つない箱。
そして僕を見つめる。
やっと理解した。
勝手に拗ねて、ごめん。
でも僕こんな風に優しくされたこと、なくて。
その言葉に、ヒョンは頷く。
ヒョンはどこか、安心したように見えた。
そして荷物を持ち上げながら、
ヒョンは少しだけを目を僕から逸らす。
それ以上は言わない。
でも僕には十分過ぎるくらいに伝わった。
To be continue __














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。