地下40メートル。
ネオアーク社の地下搬送路。
人工的に掘られた巨大トンネルが、都市の下を静かに貫いている。
通常は無人搬送車のみが通行する完全自動区画。
だが今夜だけは違う。
赤外線、振動センサー、無人機銃座。
明らかに“戦場仕様”。
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エレベーターが停止する。
金属扉が開く。
最初に歩み出たのは――
甘狼このみ(指揮官)
黒の軽装戦術服。
配信で見せる柔らかさは一切ない。
冷たい瞳だけが、状況を計算している。
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甘狼このみ
「状況」
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虹深°ぬふ(虹影の人形遣い)
「地下搬送路、全長1.8キロ。中央制御室は奥500メートル地点。本物のEVA-Λはそこを通過予定」
モニター上に赤い点が点滅する。
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音ノ瀬らこ(追跡の申し子)
「足跡、ある。人間。警備員じゃない。……軍用ブーツ」
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ゆらぎゆら(重量武器の姫)
「戦えるね」
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甘狼このみ
「最小限で済ませる」
一拍。
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甘狼このみ
「――行くよ」
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全員が動く。
無音に近い速度で。
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天井の影。
そこを滑るように移動するのは――
眠雲ツクリ(微睡の暗殺者)
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眠雲ツクリ
「前方50メートル、機銃座。人員二。眠らせる?」
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あくび・でもんすぺーど(眠り喰らいの悪魔)
「任せろっ」
小さく指を鳴らす。
通路の空気がわずかに揺らぐ。
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警備兵A
「……なんか、急に……」
警備兵B
「眠……」
二人は静かに崩れ落ちる。
発砲なし。
警報なし。
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小廻こま(おとり作戦の秀才)
「はい、ステルス成功~。このまま中央まで行けるといいねぇ」
その軽さの裏に、緊張。
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だが。
通路中央に差し掛かった瞬間。
床が沈む。
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音ノ瀬らこ
「トラップ!」
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天井から防弾シャッターが降下。
前後を完全封鎖。
同時に、側壁がスライドする。
中から現れたのは――
黒装束の武装部隊。
ヘルメットには同じ紋章。
“R”を逆さにしたようなマーク。
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虹深°ぬふ
「……レインコード」
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通信が強制的に割り込む。
《ようこそ、M-Unit》
低い電子音声。
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《ここまで来ると読んでいた》
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甘狼このみ
「読まれていたのは、こちらの動きだけじゃない」
彼女は銃を構えない。
代わりに、全員へ短い指示。
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甘狼このみ
「ゆら、左壁。こま、右。らこは後方の逃走経路を確保。ツクリ、天井」
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ゆらぎゆら
「壊すね」
次の瞬間。
重低音。
ゆらの重量武器が壁面を粉砕する。
粉塵。
視界遮断。
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小廻こま
「わー!派手派手ぇ!」
閃光弾。
視覚センサーを強制ダウン。
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音ノ乃のの(射撃の天才)
「弾道計算完了」
乾いた銃声が三発。
敵の武器だけを正確に撃ち抜く。
命は奪わない。
だが戦闘不能。
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しかし。
中央に一人、動かない影。
背丈は高い。
黒いコート。
素顔のまま。
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???
「さすがだな、ミリオンプロダクション」
声は加工されていない。
生身。
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甘狼このみ
「……あなたがレインコードの現場指揮官?」
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男は笑う。
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レインコード幹部
「君たちは“守っている”つもりだろう」
一歩、前へ。
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レインコード幹部
「だがEVA-Λは、守るための兵器じゃない。選別のための鍵だ」
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虹深°ぬふ
「選別……?」
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男はこのみを真っ直ぐ見る。
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レインコード幹部
「甘狼このみ。君は知らないのか?なぜ自分が指揮官に選ばれたのか」
空気が変わる。
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甘狼このみ
「挑発は無意味」
だが、胸がわずかに揺れる。
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レインコード幹部
「君の脳波パターンはEVA-Λと完全同期する」
沈黙。
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音ノ瀬らこ
「……そんなデータ、外部にないはず」
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レインコード幹部
「あるさ。内部に協力者がいるからな」
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その瞬間。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ。
ぬふの端末がエラーを吐く。
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虹深°ぬふ
「え……?」
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誰も気づかないほど小さな違和感。
だがこのみは見逃さない。
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レインコード幹部
「本物のEVA-Λは、すでに起動している」
遠くから振動。
地鳴り。
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眠雲ツクリ
「中央制御室……動いてる」
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赤い警告表示。
《EVA-Λ 起動シークエンス開始》
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甘狼このみ
数秒、思考を超高速で回す。
選択肢は三つ。
1. ここで幹部を拘束
2. EVA-Λを止める
3. 仲間を守る
全ては不可能。
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レインコード幹部
「さあ、選べ。指揮官」
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このみは、迷わない。
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甘狼このみ
「全員、制御室へ。こいつは――このが止める」
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ゆらぎゆら
「一人で?」
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甘狼このみ
「命令」
絶対の声。
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仲間が走る。
残るのは二人。
静かな地下トンネル。
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レインコード幹部
「自己犠牲か。美しい」
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甘狼このみ
「違う」
銃を構える。
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甘狼このみ
「このは、全員で帰る」
引き金を引く。
銃声が地下に響く。
同時に、遠くでEVA-Λの起動音が唸りを上げる。
都市上空の通信衛星が一斉に点滅する。
世界規模のハッキングが始まろうとしていた。
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甘狼このみは、まだ知らない。
EVA-Λが“選別”する対象が何なのかを。
そして。
仲間の中に、
すでに決定的な亀裂が入っていることを。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。