夜20時。
都内某所、高層ビルの一室。
防音スタジオに柔らかなライトが灯る。
モニターには待機画面。
コメント欄はすでに高速で流れている。
> 「待機!」
> 「今日の雑談なにー?」
> 「イラスト完成楽しみ!」
椅子に座る少女は、深く息を吸った。
ヘッドセットを装着し、マイク位置を微調整する。
その表情は柔らかい。
だが、瞳は鋭い。
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甘狼このみ(指揮官)
「……回線安定、暗号チャンネル接続。全員、状況報告」
部屋の照明が一段階落ちる。
壁面モニターに複数のウィンドウが浮かぶ。
それぞれのメンバーの位置情報、バイタル、作戦進行度。
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音ノ瀬らこ(追跡の申し子)
「ターゲット企業《ネオアーク・システムズ》本社ビル周辺、監視完了。裏口に警備ドローン三機追加。想定より多いね」
小廻こま(おとり作戦の秀才)
「こっちは炎上準備OK~。今から“ちょっとした騒ぎ”起こすね。SNSトレンド、5分で乗っ取る」
虹深°ぬふ(虹影の人形遣い)
「内部ネットワークに仮想端末を三つ設置。セキュリティAI、バージョン古い。かわいいね」
ゆらぎゆら(重量武器の姫)
「正面突破、いつでもいけるよ?壊す?」
甘狼このみ
「却下。今回は静かに奪う。壊すのは最後の手段」
その声は穏やかだが、絶対だ。
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時計は19時59分。
このみは一瞬だけ目を閉じる。
次に目を開いたとき、そこにいるのは――
“人気VTuber”甘狼このみ。
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配信開始。
甘狼このみ(配信モード)
「みんな~!こんばんわ!甘狼このみだよ~!」
コメントが爆発する。
> 「きたーー!」
> 「声かわいい!」
> 「待ってた!」
このみは微笑みながらペンタブを握る。
今日の配信内容は――イラスト雑談。
だが、その裏で。
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甘狼このみ(小声・暗号回線)
「こま、開始して」
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数秒後。
SNSトレンドに突如浮上するワード。
《#ネオアーク不正疑惑》
小廻こまの情報拡散スキルが炸裂する。
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小廻こま
「はい、炎上完了~。広報と幹部、会議室に集合してるよ。内部警備、手薄になった」
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音ノ瀬らこ
「今。裏口の搬入口、動いた。輸送車一台出る。例のAIコア積んでる可能性高い」
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ネオアーク社が秘密裏に開発している次世代AI兵器《EVA-Λ》。
国家防衛網を単独で突破可能な危険技術。
それを奪還するのが今回の任務。
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甘狼このみ
「らこ、追って。ツクリ、影に入って」
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眠雲ツクリ(微睡の暗殺者)
「了解。視界外、死角移動。気づかれないよ」
その声は静かすぎて、存在が溶ける。
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配信画面では。
甘狼このみ(配信モード)
「今日はね~、ちょっとかっこいい感じのイラスト描こうと思ってて!」
コメント欄は平和だ。
だが裏では、輸送車が高速道路へ入る。
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音ノ乃のの(射撃の天才)
「風速3.2。距離800。タイヤ、撃てる」
冷静な声。
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甘狼このみ
「撃たない。事故は起こさない。リズ」
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雨夜リズ(宵雨の同化者)
「もう屋根の上。擬態完了。内部侵入するね」
彼女は輸送車の金属色に溶け込むように同化する。
存在が“景色”になる。
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あくび・でもんすぺーど(眠り喰らいの悪魔)
「うぅ……運転手さん、眠くなぁれ……」
輸送車がふらりと減速する。
事故ではない。
ただ、安全に路肩へ停車しただけ。
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眠雲ツクリ
「開錠。制圧完了。非致傷」
※誰も命は奪わない。それがM-Unitの鉄則。
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虹深°ぬふ
「コア確認。これがEVA-Λ。……でも変だよ、指揮官」
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甘狼このみ
「何が?」
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虹深°ぬふ
「これ、“囮”。本体じゃない」
空気が凍る。
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その瞬間。
らこの息が乱れる。
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音ノ瀬らこ
「待って……別ルートにもう一台!地下搬送路!」
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甘狼このみ
「全員、第二経路へシフト!」
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だが遅い。
モニターが一瞬、乱れる。
暗号回線にノイズ。
知らない信号が混線する。
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《こちらレインコード》
低い電子音声。
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《ミリオンプロダクション。やはり君たちだったか》
全員が沈黙する。
敵は――こちらを知っている。
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配信画面では。
甘狼このみ(配信モード)
「あ、ちょっと回線重いかな?大丈夫かな~?」
コメントは笑っている。
> 「このみんの回線がんばれw」
> 「PONかわいい」
だが裏では。
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甘狼このみ(低く)
「……内部情報が漏れてる」
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《レインコード》は続ける。
《君たちの中に、我々と繋がっている者がいる》
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沈黙。
誰も呼吸をしない。
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ゆらぎゆら
「……壊していい?」
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甘狼このみ
「ダメ」
即答。
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甘狼このみ
「誰も疑わない。今は任務優先」
だが、その胸の奥に刺さる疑念。
もし本当に裏切り者がいるなら。
それでも、自分は指揮官でいられるのか。
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《レインコード》の通信が途切れる。
ノイズだけが残る。
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虹深°ぬふ
「地下搬送路、座標出た!本物、移動中!」
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甘狼このみ
「奪還する。絶対に」
その声は静かだが、揺るがない。
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配信はエンディングへ。
甘狼このみ(配信モード)
「今日は来てくれてありがとう!またね!」
画面がフェードアウトする。
だがこのみはヘッドセットを外さない。
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甘狼このみ(指揮官)
「第二ラウンド開始。地下へ潜る」
カメラのランプが消える。
代わりに、壁が開く。
スタジオの奥に隠された通路。
その先は、武装格納庫。
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甘狼このみは振り返らない。
ただ一言。
甘狼このみ
「――ミリオンプロダクション、作戦続行」
照明が赤に変わる。
地下へ続くエレベーターが降下する。
その先で待つのは、
敵か、裏切りか。
それとも――
本当の戦争か。
無い分はなんとなくに考えたので、少し変になるかも?って感じです












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。