第20話

20話
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2023/12/18 09:49 更新
何を言えばいいのか、わからなくて、俺はただ、手首に触れている紫耀の指を見ている。


水が飲みたかったはずの喉は、カラカラだけれど、動けない。


「諦めようと思ったよ…。」


下を向いたままの紫耀が続ける。


「紫耀………。」

 
紫耀の指に水滴が落ちるのが見えて、自分の涙だと理解するのに、少し時間がかかった。


涙が出すぎて、喉乾くのかな。


「ごめん、俺、海人のこと泣かせてばかりだね。」



「水、飲んでくるから…。」


これ以上、紫耀の前で泣きたくなくて、俺は床に落ちた服を手に取って、ベッドから逃げ出した。






俺も紫耀も、すれ違ってばかりだ。


一緒にいた間、俺は紫耀の側にいられて、すごく幸せで、でも、紫耀はホントに幸せだったんだろうか。

俺が弱いから、無理させてたのかな。


俺が甘えてばかりで、紫耀はずっとホントの気持ちを言えなかった…?

それとも、俺が紫耀を不安にさせてしまったのかな。

廉に嫉妬してる、なんて、想像もしてなかった。

俺は、ジンに嫉妬するどころじゃなかった、ただ会いたくて。それだけで。


俺が頼りないから、紫耀を不安にさせてしまったの?





自分が情けなくて、涙は止まらなかった。




キッチンの床に座り込んでいたら、いつのまにか紫耀が前に立っていた。


「紫耀も水、飲む?」


「海人……。」


俺の質問には答えずに、紫耀が俺の前にしゃがみ込んだ。


二人して、キッチンで何をしてるんだろう。



「………。」


沈黙が怖くて、俺は、飲んでた水を紫耀に渡した。


「いらない?」


「海人……、ダサくてもなんでも、ちゃんと海人といたいんだ。

海人じゃなきゃ、ダメなんだ。」

ひと口、水を飲むと、紫耀がまっすぐに俺の目を見て、伝えてくれる。






その途端、唐突にはっきりと自分で理解した。

俺が信じられないのは紫耀の言葉じゃないんだって。


紫耀を支えられない、頼りない自分が信じられないんだ。

今の俺じゃ、ダメなんだ。


また、会えなくなったら、不安で紫耀を追い詰めてしまうかもしれない。


会えなくても、不安にならない自分でいられないと、紫耀の側にいるなんて、できない。




「なんで、廉に嫉妬したの…?

俺、紫耀のこと、好きって、伝わってなかった……?」


「ごめん…。」


責めたつもりはなかったんだけれど、紫耀が謝った。

「紫耀、謝らないで?
俺、そういうつもりじゃないよ。

俺が、頼りないから、紫耀を不安にさせたんだと思うから。」



「違う!
違う、んだ。
俺が、海人の全部を見れないのが、こんなに怖くなるなんて、思ってなかったんだよ。

ごめん、俺、海人を傷つけるヤツから守りたいって、ずっと思ってたのに、俺が海人を傷つけてた。

嫌われても仕方ないって、分かってるけど。
でも、もし俺のことまだ少しでも好きでいてくれるなら、今度こそ、海人を大事にするから。

ちゃんとダサい俺も見せるから。

俺の側にいて欲しい。」


俺の足の指に、そっと紫耀の手の指が触れる。


その指が小さく震えている。



俺は、紫耀の震えている指の上に自分の手を重ねた。


そんな風に震えさせてしまうのが申し訳なくて。


「紫耀、ありがと。

でも、今のままだと、俺、また同じこと紫耀にしちゃうと思う。

紫耀が悪いんじゃなくて、俺の問題なんだと思う。

会えなくても、紫耀のこと応援したいし、紫耀に責任感じさせたくない。

今の俺は、まだそうなれてないから…。」


そっと紫耀の指を、俺の足から離した。
そのまま、紫耀の手を握る。

「少し待って……。」



また会えなくなる選択を自らしようとしてる、また苦しくなるかもしれない、と思う。

それでも、今、このまま紫耀と一緒にはいられないと思った。


「自分の事ばっかりで、ごめん。

でも、もし大丈夫だと思ったら、また紫耀と一緒にいられる、って思ったら、必ず連絡する…。

それで、もし紫耀がその時、まだ俺といたいって思ってくれてたら、会いに来て欲しい……。」



紫耀の目を久しぶりにちゃんと見た。


俺の真意をはかろうとして、紫耀の視線が揺れるのが分かる。


今度会える時は、自分だけでちゃんと立っていられる自分でいたいから。

いつになるか分からないけれど。




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