夢の中で、またあいつが私の名前を呼んだ。
そして___消えた。
喉が詰まったように、息が吸えない。
とけいを見ると、3時32分。
胸の奥がさわがしくて、横になるのも苦しい。
私だけ、取り残されているみたいだった。
私は言葉の続きを、飲み込んだ。
夢の余韻に心がざわつくのをなんとか抑え、
ベッドから起き上がると、窓の外はまだ薄暗い。
時計は4時半。高級生徒宿舎の空気はひたすら静かだ。
寝た気がしなかった。
だが、寝直す気にもなれない。
顔を洗い、制服に袖を通す。
誰にも会わないまま寮を出た。
まだ夜が残る朝の空気が肌に刺さる。
寺刃が、私の名前を叫ぶ声が耳に残っている。
そして____わたしを庇って消える。
そんな夢ばかり、何度見ただろう。
1年生宿舎の玄関前に立つ。
誰も来ていない。
ただ、それでも少しでも早く、あいつの顔が見たかった。
夢じゃないことを、確かめたかった。
朝の日差しが差し込む中、
YSPクラブのメンバーが次々に集まってくる。
私は壁に寄りかかって待っていた。
2年生は既に揃い始めている。
どこか静かだ。
すると蛇山がこちらに近ずいてきた。
私は無言で目線を逸らした。
表情、行動、態度には出していないつもりだった。
すると次々に他も口を開いた。
私は淡々とした声で返す。
それ以上、誰も言葉を重ねなかった。
息を弾ませながら姫川さんが駆け寄ってきた。
姫川さんは小さく肩をすくめながら、
周囲を気にしている。
そのとき、遠くから賑やかな声が聞こえた。
いつも通り寺刃は元気いっぱいに走ってきた。
私にはやはりこの無邪気な笑顔は眩しかった。
まるで悪夢なんて見たことがないかのように____。
小間と玉田も遅れて姿を現した。
姫川さん、小間、玉田は顔を見合わせて
焦った様子を見せている。
それと裏腹に寺刃は全く気付かず、
いつも通りのテンションだ。
寺刃は気づいていない。
私がどんな夢を見ているのかも、
どんな気持ちでその笑顔を見ているのかも。
だが、気づかなくていい。
怪しまれてしまったが
誰にも確証をつかれる訳にはいかない。
今日も、何も言わず
こいつらの様子を眺めながら並んで歩く。
夢とは違うのは______
〈次回へ続く〉












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。