高校1年生、夏。
俺は目の前の剣持刀也に目を向けていた。
屁理屈が得意で、飾ったような敬語と垣間見えるタメ口と毒舌。
こんなキャラなのにクラスの中では隠れ真面目キャラで優等生なのがまた腹立たしい。
笑い声はイルカの鳴き声みたいで、清楚感あふれる優等生な笑みが教師にも好評なのを俺は知っている。
そんな優等生と出会ってかれこれ12年。
小学生時代の夏休みは毎日小学校の裏の山で遊んで
中学生時代の夏休みは中学受験が終わった開放感から部活に打ち込んで
そして、今。
この12年間で刀也と過ごさなかった夏はなかった。
今年も蝉の鳴き声をこいつと聞く。
きっと来年も。
再来年も。
その先もずっと。
鞄を持ちながら、そんなしょうもないことを考えて、コンビニでアイスを買って神社に向かう。
久々に訪れた神社は記憶にあったよりずっと古びていて、ずっと小さくて、
かなり古くて禍々しい祠があった。
俺たちが目の前に見ている祠。
記憶にある祠とかなり形状が違う。
キャラメルと、その辺で摘んだ花を供える。
なんとなく、「壊したのは俺たちじゃないです」と弁解の意を込めながらお祈りして祠に背を向けた。
どこかから、鐘のような音が聞こえた。
笑いながら気を紛らわせる。
帰ったらゲームしようぜ、とか提案して、流れるように刀也の家へ向かう。
俺たちにとって、ただのよくある日だったから。
この日から、少しずつ、日常は変わっていたらしい。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!