失恋系
だっれも救われねぇぜ。
受け攻めなんかねぇよ
紅く染まった空からは想像もできないような冷たい風が吹く。
国連先生からの頼みごとで日本と教室でプリントをホチキスで止めていた。
日が落ちるのも早くなっていることも相まって部活以外の人たちはそそくさと帰宅した。
そんな人通りの少ない教室で淡々とホチキスがプリントをまとめていく音が響く。
しかし、静かなのはどうにも居心地が悪い。
何を血迷ったかあたしは今まで心のうちにとどめていた想いを打ち明けた。
彼女はいつも気付かないふりをする。
今だってそうだ。彼女は何かから逃げている。
それはあたしなのか。あたしの好意なのか。また別の何かなのか。
余分な華やかさがなく、素材そのままのきれいな顔立ちは悪夢を思い出したかのように歪められた。
冷たい風は容赦なくカーテンを揺らしている。
それ以降は会話はなかった。
すべてをまとめ終わるとあたしは逃げるように教室を後にした。
いいのか悪いのか、明日は休日だ。じっとして居たくもないので、繁華街をうろつくことにした。
この時期はクリスマス。かなり遅い時間であろうがカップルもよく目立つ。
そんな中明らかに不釣り合いなおじさんの腕に収まっている女の子が目に入る。
すぐさま駆け寄って胸倉をつかむ
女子高生が大人に勝てるわけもなく立ち並んだお店の壁に打ちつけられる
おじさんは怒鳴りながら繁華街を抜けていった。
周りの人たちは騒めきながら通り過ぎていく。
繁華街を抜けてすぐの堤防の上にあるベンチに連れてこられる
彼女も話に続きがあると悟ったのかしばらく沈黙が続いた。
口に出すのも憚られる彼女の行為は、彼女自身が問題を抱えていることを示していた。
電灯に背を向けている彼女の表情は影になってよく見えない。ただ、憎らしくこっちを見ているのはなんとなくわかった。
その通りだ。
学生である立場で出来ることは限られている。かといって大人はどこにでもいるような学生に手を貸すことはしないだろう。
涙がにじむ目を隠すために下を向く。
きっと彼女には見えているのだろう
何も言えなかった。去っていく背中すら見ることすらできなかった。
きっと彼女は誰の手も取らないのだろう。
誰のものにもならないのだろう。
そしてそれは彼女を一生縛り付けるのだろう。
それから解放されるにはすべてから解放される必要があるのだろう。
だから私は月曜日、彼女の訃報を待っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。