第5話

#.憶
247
2025/11/26 09:00 更新
彰人side
#.東雲彰人
……ただいま
#.東雲母
……おかえりなさい
そんな短い会話をしてオレは自分の部屋へ

階段を駆け上がる。

そのままの勢いでベッドに飛び込む。
#.東雲彰人
……
……随分家の空気が暗くなった。

親父はアトリエに篭りっきり。

何が原因か、と言われたらもちろん絵名のことが原因だ。
#.東雲彰人
……はぁ
オレはため息を吐きながら目を瞑った。
#.???
ねぇ!これみてっ!
誰、だ……?

どこか懐かしい声だ。




……あぁ、絵名か。

幼い頃の絵名だ。

絵名はオレにできた絵を得意げに見せる。
#.東雲彰人
……これ、なんだ?
#.東雲絵名
もう!わかんないの?
#.東雲彰人
……わかんねーよ、姉ちゃん
オレは昔の呼び方で絵名のことを呼ぶ。
#.東雲絵名
これはあきとだよ!!
自分が描いた絵を指差しながらオレに言ってくる。
#.東雲彰人
……オレ?
#.東雲絵名
そう!おいしそうにパンケーキたべてるの!
ニコッと屈託のない笑顔で笑う。
#.東雲絵名
この絵ね、おとーさんにほめられたの!!
#.東雲絵名
「よく描けてる」って!!
#.東雲彰人
そうか……よかったな、
本当に嬉しそうで、

こっちまで嬉しくなる。



でもきっとこれは……
#.東雲彰人
(夢だな)
そう気づいてしまったから少し心がモヤモヤした。
#.東雲絵名
……あきと、げんきない?
#.東雲彰人
いや、べつに……ッ!
#.東雲絵名
だいじょうぶ、だいじょうぶ
そう言いながらオレの頭を撫でてくる。

その暖かさに泣きそうになった。
#.東雲絵名
……これ、あきとにあげる
不意にそう言って手に持っていた絵をオレに差し出してきた。
#.東雲彰人
は……?いいのかよ
#.東雲彰人
これ、親父に褒められたんだろ
#.東雲絵名
うん!でも、もっとじょーずにかいて、おとーさんにほめてもらうの!
絵名が得意げにニコッと笑う。
#.東雲絵名
だから、これはあげる!
……そうだ、あの日もこんな感じで絵を渡してくれたんだ。

オレが犬に襲われて泣いている時に頭を撫でながら

親父に褒めてもらった絵をオレにくれた。



その絵がオレが今までずっと大事にしていた絵だ。
#.東雲彰人
……オレ、馬鹿だな、
過去に縋って、絵名の未来が消えてしまった。

それに、最期に投げつけた言葉は一つも思っていない。

なんなら……
#.東雲絵名
……?あきと?
#.東雲彰人
ねーちゃん、
オレは絵名を撫でながら言う。
#.東雲彰人
オレの、姉でいてくれてありがとう
もう遅いけど、

もう届かないけど、

自分の夢の中でしか素直になれない自分に嫌気がさすけど、



それでも、言わずにはいられなかった。
?????
#.??
……今は、ゆっくり休んで
私はそう言いながら彰人を見る。

彼の頬にすーっと一筋の涙が流れた

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