「なぁ、慎太郎〜」
『なぁんだよ樹〜』
「ドライブ行こうぜ」
『えっ、いいけど…』
「えっ、てなんだよ笑」
『いや、樹から誘ってくるの珍しいなって』
「行かねぇならいいけど?」
『行く行く!行くよ!』
.
.
そんなこんなで樹の車の中
チルな曲が流れる中
たわいもない話で盛り上がる
「うわ、あの女の子可愛い」
『よそ見してると事故るよ?』
「赤信号だからいいんだよ」
「は?彼氏持ちかぁぁ!」
なんて運転席で騒ぐ樹
そんな姿を横目で見る
「恋、してぇなぁ」
『何言ってんだか爆モテさんが』
「ピュアっピュアな恋愛がしたいんだよ俺は」
『ピュアっピュアねぇ』
「そんな慎太郎は恋してねぇの?」
『んー、どうだかねぇ』
「ほら、兄ちゃんに話してみ?」
『…叶わぬ恋って、あると思う?』
.
.
叶わぬ恋。
.
.
「無いな。叶わぬ恋って、諦めてんじゃん」
「諦めなければさ、なんでも叶うもんよ」
『かぁぁ…やっぱり爆モテじゅったんは考え方が違うなぁ!』
「うるさいなっ!声でかいわ」
諦めてる、か…
確かにそうなのかもしれないし
そうじゃないかもしれないし。
「何、そんなしんどい恋してんの?」
『してるって言ったら?』
「んーまぁ、危ない関係とかじゃなければ応援するけど」
『そっか…』
「ふっ、暗い顔だなぁ?」
『そんなことないしぃ』
あーだこーだ話してるうちに
もうタイムリミットは来てしまって
俺の家の駐車場に着く
「よーし、着いたぞー」
.
.
諦めなければ。
.
.
「慎太郎?どした?」
心臓がうるさい
声が上手く出ない
「酔った?」
シートベルトを外してこちらに身体を寄せる
少し近づいた距離に
無意識に手が動いて
『じ、じゅり…』
手首を掴む手が震える
「ん、どした」
優しい温かい声が耳に入って
『好き』
「慎太郎?」
『俺が、好きなのは…樹、だよ』
「そういうことな、叶わぬ恋って。」
何決めつけてんだよ
って、温かい手が俺の頭を撫でて
「諦めたらそこで試合終了って言うだろ」
『樹…』
「素直に嬉しいよ、その気持ち」
「でも、慎太郎をそういう目では見れないかな」
『そ、そうだよなぁ!そ…』
「まだな」
言いかけた時に割り込むように聞こえた
.
.
まだな
.
.
たったその3文字
「俺の事、好きでいてよ。俺がよそ見出来ないくらいに慎太郎の気持ち頂戴」
『いいの?』
「慎太郎からめっちゃアプローチ来るの楽しみにしてるわ」
「大丈夫、からかいとか遊びとかじゃないから。意識させてよ慎太郎」
『い、言ったな?!どうなっても知らないからな!』
「楽しみにしてるわ笑」
恥ずかしくて逃げるように車を飛び出て
エントランスに向かう
「慎太郎!」
窓を開けて名前を呼ばれる
手を少し出して手招きされるから
車に近づいていく
「伝え忘れてたことあったわ」
.
.
.
「今日で少し意識した」












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。