下を向くカイくんの手を引き
いつもと変わらない帰路を歩く
色々しちゃったし…なんかしてあげたいよね…
そんな考えを現実にしようと
カイくんに話を振る
まだほんのりと赤い顔を上げて
僕に視線を向ける
明日のお祭りに僕の奢りで行くことにする
僕がそう言うと
少し驚いた顔をして 一瞬黙り込む
それ以降言葉は無く
気まずさのない沈黙が流れる
分かれ道が見えてくると
カイくんの歩くスピードが分かりやすいほど遅くなる
そう言うカイくんの手は
僕の手を少し強めに握る
分かれ道に到着し
カイくんの手を離す
離した手には
カイくんの温もりが微かに残る
表情は変わらないのに
声色だけは、どこか名残惜しそうで
少し歩いて
振り返る
カイくんに手を振ると
少し控えめに手を振りかえしてくれる
手を下ろしたカイくんは
僕の家と反対の道を進む
カイくんが見えなくなったのを確認してから
僕も再度歩き出した
明日のお祭り、楽しみだなぁ…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。