第2話

1.出会いと初恋
212
2023/06/17 13:00
放課後の部活も終わる頃の教室に 忘れ物を取りに来ると
一人 机に顔を伏して寝ている男の子が
佐藤
カイくん
近くで呼んでみると 起きたのか体が少し動く
顔を上げると 綺麗な紫の瞳が僕を見つめる
カイ
…なに
クラスの顔見知り程度の関係
話したことが無いからか 少し冷たい口調で言われる
佐藤
帰らないの?
質問の答えが返ってくることはなく
逆に僕が質問される
カイ
今何時…?
そういえば…6限目から寝てたな…
佐藤
5時半だけど…
カイ
…あっそ……
興味がなさそうな言葉とは反対に急いで荷物を鞄に詰めると
教室を後にしようとするカイくん
僕も筆箱を鞄にしまい カイくんを追うように教室を出る
カイ
…なんでついてくんの?
帰り道 偶然同じ方向で
カイくんの隣を歩く
佐藤
偶然だね!僕も同じ方向なんだ!
カイ
…あっそ
僕から視線を外し 前を向き直す
茜色の空を背景にしたカイくんの横顔から 何故か目が離せず
ボーっとカイくんを眺めていると カイくんがもう一度僕の方を見る



カイ
…何?
佐藤
え?
カイ
いやこっち見てただろ
眉間にしわを寄せながらそう言われる
佐藤
綺麗だなって...
歩いていた足を止め カイくんに向かって言ってみる
本当にそう思ってるから
カイくんも 僕と同じように歩みを止める
カイ
綺麗...?
佐藤
うん、カイくんが
笑顔でそう言うと 目を丸くして僕を見る
その後僕から顔を背けると さっきより速足で歩きだす
カイくんを追って 僕も速足になる
佐藤
カイくん
カイ
…なに?
振り返りもせずに 言葉だけを返す
佐藤
もうちょっとゆくっり歩かない…?
カイ
さっきと同じくらいだろ
そのまま少し歩くと カイくんが足を止め 僕の方を振り返る
頬を薄っすらと赤色に染めたカイくんと目が合う
カイ
佐藤
カイくん照れて…
カイ
ない
ちょっと睨むようにそう言うと また言葉を続ける
カイ
俺もうこっちだから
分かれ道の右の方を指さす
佐藤
そっか、また明日!
カイ
また...
どこか嬉し気にそう言うと さっきよりゆっくりとその場を後にする
その表情カオを見せてくれるのが 僕だけだったら嬉しいな...

そう思いながら 僕も帰路を辿る

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