第64話

64
2,560
2021/09/06 21:00
あなた

ただいま...

母
あ、おかえり
あなた

あれ?母さん…なんでいるの?

母
今日は有給もらってね、しばらく休みなら無理しないように見張らないと
あなた

そっか…

母
それより、本当に異常なかったの?びっくりするくらい声死んでるけど
あなた

…採血、超痛かった…

母
あぁ…昔から採血嫌いだったわね笑 しばらくはゆっくりまったりしてなさい
あなた

は〜い






帰って早々、また休みなさいと言われた私は部屋に戻る。




部屋の扉を開ければ色々と悲惨な状態で…倒れた時に私が倒したであろう教科書やノートが床に転げ落ちている。




…まず片付けから始めるか…笑






















一通り片付けを終えた時にはすでに学校も終わり部活も終わる時間。




片付けが終わり、綺麗に整った自分の部屋から見えるこの風景を見ると、あの病院がいかに高い場所に位置していたのか実感する。




ぼーっと窓の外を眺めていると、美しい夕日が私の心をスーッと音を立てて浄化していく。




夕日を見ると最近の私は本当に疲れていたんだなと何かよくわからないけど泣きそうになってしまう。




倒れて起きて倒れて起きて倒れて起きて…よく頑張ったよな、私。




むしろあれでよく大怪我もなく生きてられたと思う。これからもその調子で生きるけど。




一人でよくわからない独り言を呟いていると、いつの間にか私の部屋の扉の前にはサナとミナ先生が立っている。




…は?なんで?



あなた

っは?!な、何d ◎△$♪×¥#?!…

ミナ
ミナ
焦りすぎやろ笑
サナ
サナ
ちゃんと来るって言ったやろ?笑
あなた

だ、だって…いつ来てたの…

サナ
サナ
ついさっきやで?おばさんがふっつーにあなた上にいるわよって
ミナ
ミナ
逆に気付かんかったん?めちゃくちゃ大きい声で呼んでたのに。
ミナ
ミナ
なんなら怒っとったで。先生来てるのに出迎えもしないなんて…って
あなた

いやそれは…ごもっともですけど

サナ
サナ
まぁとりあえず座るわな。もう歩いて疲れてクタクタやで
あなた

それより、なんで二人一緒に来たの?

サナ
サナ
なんでって…サナんち顧問ミナ先生やで?
ミナ
ミナ
…忘れてたん?
あなた

い、いや…そんなわけないじゃないですか…はは…

サナ
サナ
こんな可愛い彼女怒らせるなんて生意気やなぁあなたも
あなた

本人いる前でからかわないでもらえます?

ミナ
ミナ
ええやん。私は嬉しいよ?こう言うのも恋人っぽいやん
サナ
サナ
そーそー。サナと付き合ってればもっと堂々と言えたんやろうけど
ミナ
ミナ
サナちゃん?なんか言った?
サナ
サナ
言ってませんよ?笑




…昨日まであんなにバチバチしてた二人が、私がどっちか決めただけでこんなに仲良くなるもんなの?




変わり身の術的な感じでなんか変わった?私の知らないところで何があった?




…今度は今度で追いつけないぞ?笑
















それからしばらく3人で話して、サナはそろそろ帰らないと怒られる!って焦りながら帰っていった。




ミナ先生は相変わらずまだ私の部屋にいて、さっき飲み物を届けに来てくれたお母さんに心配された。




“うちの子が何かしましたかね…もし何か問題をおこしてたら教えてください。一発入れとくので“




なんて、普通の主婦が言うような言葉じゃない言葉を残して一回へと戻ってった。




目の前の人は…さっきの母さんの一言でやられたのか声を押し殺して笑っている。



あなた

…なんで笑ってるんですか…笑

ミナ
ミナ
や…別になんでもないねんけど…笑
あなた

いつまでも笑ってたら追い出しますよ?

ミナ
ミナ
そんなことせんくせに...笑 あなたは私のこと大好きやもんな?
あなた

…先生こそ。授業中ずっと私のこと見てたくせに。

ミナ
ミナ
なっ…そりゃ目の前におったら嫌でも視界に入ってまうやろ?
あなた

へぇ…嫌だったんですか?悲しいですね...

ミナ
ミナ
や、そう言う訳やなくて…な?
あなた

…笑 そんな真剣にしないでくださいよ笑

ミナ
ミナ
ほんと…先生からかうのもいい加減にしな?笑
あなた

だって今は先生じゃないですし。私の彼女でしょ?

ミナ
ミナ
…うん…//
あなた

…せんせ、ちょっとこっち来てください

ミナ
ミナ
へ?な、何するん?
あなた

別に…ただ引っ付きたくなっただけです

ミナ
ミナ
ひゃっ…何…っな、なんでそんな近いん…//
あなた

引っ付きたくなったんですけど…だめでした?

ミナ
ミナ
そう言うわけやないけど…//





辿々しく私のすぐそばにきたミナ先生を抱き寄せると思ったより勢いがついてしまったようで、気付いたら私の腕の中で固まってる。




多分先生も恥ずかしいからって下向いてるんだろうけど、私も自分でやったくせに恥ずかしいからって上を向いてる。




でも…下から微かに香る先生のあの香りが私を誘惑してきて。




ふと下を向いてみると先生もタイミングよく上を向いてしまったらしく。




綺麗にばちっと音を鳴らしてあった視線が、私たちの行動を支配していく。








…やっ…わらか…




何を言うまでもなく私たちの考えは一致していたみたいで。




二人で寄せたお互いの唇は吸い込まれるように相手の唇へ。




初めて触れた先生のその唇はなんというか…ね。




物凄く柔らかくて…一度離れた後にもまだ触れた実感が湧かないほどに柔らかい。




少しだけ甘くて…さっき出された麦茶の香りがして。




その甘さと香りを感じたところでやっと触れたことを自覚する。




その途端に耐え切れないほどの愛しさと恥ずかしさが襲ってきて…二人して上を向いたり下を向いたり。




…いつも大人ぶってる先生も、今私と同じ状況なら、さっきとは比べものにならないほどの表情をしてるんじゃないか。




そんな悪い考えが頭に浮かんだ時には私の手は動いていて。




唇が離れた後、またも下を向いてしまった彼女の視線を無理矢理上に向けさせると、さっきよりも格段と真っ赤になっている先生の顔があった。



























プリ小説オーディオドラマ