時刻はam7:30
練習開始時刻は9:00からなのだが、早めに来てやるべきことは終わらせておくっていうのがマネージャーの仕事だ。
一番乗りの体育館はやっぱり冷え込んでいて、ウィンドブレイカーは脱がず、着々と準備に取り掛かった。
昨日、薬局であらかじめ買ってきたテーピングを補充し、ドリンクの下準備をする。時間は有限、出来る作業をなるべく早くしてバタバタしないようにしたいな…と思っていたら気付いたら小走りになっていて…笑
端から端、昨日は有志が手伝ってくれたけど今は1人なんだから余計急がなきゃな、なんて思いながらモップをかけていく。
モップをかけながら昨日の高橋さんの話の内容をふと思い出す。
私が高橋さんに認めてもらう為にはどうすればいいんだろう。理由も知らないくせに毛嫌いしていた私もまだまだガキだなぁと少し反省したんだ。
モップがけも終わり、あとはコートを立ててしまおうと体育倉庫からポールを取ろうとした時だった
大抵1人で持ち上げられそうにないポール。力が無い上に身長も低い私はなんとか数ミリ程度浮かすので精一杯だ。
もう一度持ち上げてみよう、と力を入れた時だった。
突然背後の扉が開かれたのは
あ、今の反応ミスっちゃったな、と思いすかさず挨拶する。高橋さんは気にする様子もなくずかずかと体育倉庫に入ってくれば重たい支柱を軽々と運んだ
高橋さん、まだ着替えてなかったし来てばっかってところか…それなのに私が準備してるの気付いて手伝いに来てくれたなんて…根は優しい人なんだ、と得点板を出しながら考えていた。
審判台とスコアノートを近くに準備しておけばボールカゴを出し、ネットを持ってきた高橋さんの元へと小走りで向かう。
ネットを引っ掛ければ高橋さんが巻き上げ、下の紐を結ぶ。高橋さんが結び終えたのを確認してから反対側を結べば、次々と結んでいく。
一番上の紐を結ぼうとなんとか掴むも…
流石男子バレーボール。こんなに高いネットで戦ってるなんてすごいや…と感心して、私は残念ながら結ぶことはできなかった
チラッて言ったの今しっかり聞き逃してませんからね、ハンドル側の紐を結び終えた高橋さんはこちらにきて私の持っていた紐を取れば軽々しく結んでしまった
ぽん、なんて頭を撫でられたが少し小馬鹿にされたような気がしてむかっとしてしまった。だけどなんだろう、昨日より壁を感じさせられない。
…少しずつ、この子は大丈夫かな。って思ってくれてるのかな、
そう思ってしまえばちょっと嬉しくて、るんるんでドリンクを準備するべく給湯室へと向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!