in カフェ
咄嗟に放たれた言葉に、見せる表情に速まる鼓動を抑えようと唇を噛み締める。対して隣でブツブツとほわほわを繰り返して忙しくしている出久を見ていると守りてぇこの笑顔を、だとか思ってしまう。
てめぇは覚えてねぇだろうが、幼い頃俺たちは1度だけ会っている。俺が川に落ちた時どこから湧いて出たのか誰よりも1番に俺に駆け寄ってきた。大丈夫かと声をかけてくる自分より少し背の低い人間に初めて心配なんてされた俺は躊躇して思わず手を振り払った。そいつは振り払われたにもかかわらず嫌な気ひとつせず、ただ心配で手を差し伸べたい。真っ直ぐな視線の先には助ける対象としてしか写っていない自分。それが不気味で嫌だった。地元が同じこともあって度々見かけることはあったが極力会わないようにしていたと思う。でも、そんなある日敵に襲われていた子供を少年が助けたというニュースを見た。取材人の前でその時の心情や状況をカチコチになりながらも懸命に話しているデクがいた。事件時の映像が流れてきた。大衆が不安そうに敵と子供を見守る中で1人の少年が敵目掛けて一目散に駆けて行った。その姿を見た俺は小さい頃デクに助けられたことを思い出す。当時は意地っ張りも相まって素直になれなかった。でもそのニュースを見た時感じたのは憎悪でも恐れでもなくて、ハッとするような衝動に駆られていた。そこからは早かった。デクがUAに行くって噂を聞いた時はまさかと思ったが結局国立の高校と大学行ってやがるし、頭だけはまじで良いんだなってのはわかる。でもな俺が欲しいのはデクそのものだ。見てるだけじゃいけ好かねえ。手に入れるまでが一区切りってんだ。なぁいずく














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!