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第3話

寒菊(かんぎく)
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2026/01/02 09:37 更新




僕の手にある小さなお菓子は、はちみつ味ののど飴。

女の子は、それを握るかのように手に取った。
女の子
………
この国にきたのは初めてなんだ
僕の話の前に、この国の事を教えてほしい
女の子
………
女の子は、何も言わぬまま俯く。

僕らのいる、スラム街。

今にも崩れそうなビルの間に、女の子はいた。

日の当たらない、こんな所にいる。
女の子
この国のこと…
そう、なにかない?
女の子
ないよ、教えるようなことはない
女の子
なんとなく、察してるでしょ
………
ビクトリアは、北欧に位置する国だ。

春になって雪は溶け、

夏になったら太陽は沈まず、

秋になればオーロラが見え、

冬になると厳しい寒さに見舞われる。
察するのは得意じゃないんだよね
家族はどこにいるの?
女の子
………
女の子
この寒さで生きてると思うの?
僕は、胸を突き刺されたような感覚がした。

あぁ、そうだ。

氷点下が当たり前のこの国で、服もまともに買えない

そんな環境で、人間は生きられないのだ。
ごめん、質問が悪かったね
じゃあ、自己紹介をしようか
僕は、自分の胸に手を当てて彼女を見る。

彼女は、まだ疑いの目を向ける。
僕の名前はシンシア
旅をしているんだ
君は?
女の子
ルンタ・アプア…おかぁさんからそう呼ばれてた
ルンタ純粋アプア救いね、いい名前じゃん
ルンタ
…そうかな
ルンタは、不思議そうに首を傾げた。

こんな国じゃ、純粋に生きることは難しいどころか、不可能に近い。

でも、君の母親はそれでも「純粋」に生きてほしかったのだと、僕は思う。

じゃなきゃ…

「純粋」なんて言葉を名付けやしない。

僕は、手を差し伸べる。

ルンタは、キョトンとした顔で僕の手を見つめる。
ルンタ、行こう
ルンタ
…どこに?
どこだろうね?
僕を着いていけば分かるんじゃない?
ルンタ
………
ルンタは眉を顰めて、一言吐き捨て、
ルンタ
…いじわるなヒーローだな
立ち上がって、僕の横にくっついた。


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