無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第10話

つい、笑顔になる。 side.一聖
───合宿、3日目の夕方。
野球部 全員
ありがとうございました!
監督に頭を下げながら、額を流れる汗。
やっと3日間にも及ぶ、地獄の練習が終わった。
***
チームメイト
あー……全身筋肉痛だ
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
治る暇がないくらい
痛めつけたからな
チームメイト
明日からも普通に部活だし
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
夏は野球の季節だからな
荷積みを終え、俺たちがバスに乗り込んだ時には、既に満席近くまで埋まっていた。

というのも、行きは別のバスだったチア部が、なぜか帰りは同じバスで帰るらしい。
チームメイト
あーあ、どうせなら俺も
チア部と後ろの方に乗りたかった
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
いざ女子目の前にすると
何も話せなくなるくせに
チームメイト
うっせぇ!
……だって恥ずかしいんだよ。
いいよなぁ、一聖は
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
は?なんで
チームメイト
だってほら、チア部の上西先輩と
幼なじみなんだろ?羨ましい〜
"幼なじみ"……か。
確かにそうだけど、なぜか素直に頷けない。

幼なじみって、何なんだろう。
友達じゃない。かと言って姉弟とも違う、だけど……恋愛対象かと言われりゃ、それもまた人によるんだろう。

一体、世界中でどれだけの"幼なじみの片割れ"が片想いをしているんだろう。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
いいもんじゃねぇよ、幼なじみなんて
チームメイト
ん?なんか言ったか?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
んや、別に
ボソッと呟いた言葉が聞こえていなかったことにどこか安堵しながら、窓の外へと視線を向けた時───。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
うわ、いっぱいだ……
遅れてバスに乗り込んだらしい聞き覚えのある声に、バスの入口へと視線を向ける。

やっぱ、谷原だ……。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
どう思う?
チームメイト
ど、どうって……谷原?
可愛いよな〜、いつも笑顔で、
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……そうじゃない。
レディファーストって言葉、
知ってるか?
チームメイト
ま、まさか……
瀬戸ぉ、そりゃないぜ〜
バスを見渡して、諦めたように補助席を出そうとする谷原に、気づけば隣のチームメイトに耳打ちしていた俺。

"レディファースト"なんて言葉を使って、チームメイトの良心に漬け込んだのは最悪だけど、正直、谷原のことは放っておけなかった。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
谷原、こっち
谷原 芽衣
谷原 芽衣
えっ?……でも、
チームメイト
俺が補助席座るから!
谷原は、あっち座って
申し訳なさそうな顔をしたあと、すぐに嬉しそうな笑顔を見せた谷原。

その顔を見て、ホッとした。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
瀬戸くん、ありがとう!
隣、お邪魔するね
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
あぁ
遠慮がちに通路側にちょこんと座った谷原が、俺を見上げて笑ったと同時に、バスは大きく揺れながら出発した。
***

───10分後。

バスが出発してすぐ隣でウトウトし始めた谷原が、しばらくしてすっかり寝入ってしまったのは知っていたけれど。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
…………
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……っ!
カーブでかかる遠心力に負けて、俺の肩に寄りかかるような体勢になった谷原に、心臓がドクンッと跳ねた。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
…………
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……フッ
だけど、谷原の寝顔を見た瞬間、スッと体から力が抜けていくような気がした。

……なぜだろう。
谷原には、人を笑顔にする力がある。

少し前に、谷原に八つ当たりして傷付けてしまった自分が許せないくらい……今じゃもう、谷原の笑顔が俺の中でも当たり前になっている。
***

───バスが学校に着いて、ザワザワとみんながバスを降りていく中。

相変わらず俺の肩にもたれて眠る谷原。

起こすべきだと分かりつつも、中々起こせない。
上西 凛乃
上西 凛乃
あれ?芽衣?
こんなところに乗ってたんだ
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……っ、
上西 凛乃
上西 凛乃
しかも爆睡……
私もキツいこと言っちゃったし
きっと疲れてたんだなぁ〜
バスの後部から歩いてきた凛乃が、俺の肩で眠る谷原を見つけて驚いたように声を上げた。

突然の凛乃に驚きつつも、好きな人に見られたってのにそれほど動揺していない冷静な自分に驚く。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……んん〜っ、
上西 凛乃
上西 凛乃
あ、芽衣、起きた?
もう学校着いたぞ〜
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……凛乃先輩?
……って、わぁ!!!
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……っ、
谷原 芽衣
谷原 芽衣
ご、ごめん……瀬戸くん!
肩、重たかったでしょ……!
俺の肩にもたれていると自覚した途端、慌てて俺と距離を取る谷原の顔は真っ赤で。

そんな谷原を見てると、なんだか急にこっちまで恥ずかしくなって来る。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
んーん、大丈夫
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……良かった。
ありがとう、瀬戸くん
多分……俺の顔も、真っ赤だろうな。