死にたがりの少女がいた_____。
彼女はどこにでもいるような、高校1年生。
去年までは、なんら変わった様子もなかった。
ただぽつりと呟いた。それは、泡となって消えていく。
去年まで、なんら変わりもなかったのに…なかったはずなのに、それは無慈悲にも突然起こってしまった。
今日も咲いていた。今日は……彼岸花か……
「花咲病」それは顔のちょうど、右目のところにそこまで大きくない花が咲いてしまう。私はまだ初期症状だから…それまでで落ち着いているけれど…。
いつ死ぬかなんてわからない。そんな病気らしい。治療法なんて無いんだし。
朝ごはんを作りながらお弁当を作る。別に、こういうのは苦ではないし、なんなら好きな方だし。朝ごはんを食べながら、スマホを見てみる。……なんだ、今日雨降るんじゃん…。傘持たないと…。あ、紅葉とは今日も一緒に行けそ、あとでメール返しとこ。
今日も眼帯をつけて学校に向かう。……キラたちにもまだ教えていない事だから…。
誰もいない家に対して言ったところで、当然帰って来ない。わかりきってたことだし、別に良いんだけど
うぐ……ホントごめん紅葉…。言いたくても言えないことってあるじゃん?ね、しょうがないよ()
あーー、なにせこの純粋に対して嘘をついている自分が醜い……
まぁこれは私の日課。毎日憂鬱な通学を、純粋な君のおかげで楽しめてるんだから、それは感謝する以外ないでしょ。
あぁ、こんな毎日が続けば良いのになぁ…
……相変わらずバカなんだなと、察してしまう。
そして毎日のようにこう問われる。
……ごめん、みんな。
騙すような真似して、ごめん____
高1の入学式が終わって、一ヶ月が経ったくらいだった。
いきなり眼帯をして学校に来るようになったのは。
いつも通りと変わらない挨拶で、変わらない制服に身を包んで。……変わったのは目元だけ。
それからというもの、毎日眼帯をつけるようになっていた。入院もしていた。どうやって問い詰めても、おしゃれとか気分とか、茶化されて終わる。
それから、変わったことは……
沙羅が死にたがりになったこと…くらいか。
なんでかわからない、ただ「生きたくない」とか「消えたい」とか、そういうのを呟くようになった。
ただ、それくらい。それくらいなのに、ひどく胸騒ぎがする。……嫌な予感なんて、当たらなければいいのに。
あぁ、楽しい。……こんなに楽しいのに…楽しいからかな…
生きたくない。
そう思ってた時だった。突風が吹いてきたんだ。結構強い風。眼帯はきつく縛っていたからへーきだと思っていた。
…、誤算だった。判断を誤ってしまった…。
飛ばされちゃったんだ、私の眼帯。
私はその時、どうすればいいのかわからなくなった。壊れないと思っていた日常が、こんな形で終わりを迎えたんだから。
もうその時の記憶なんて残っていない。多分、この後…
って呟いて、紫霊から眼帯を奪い取って、そのまま教室に戻ったんだっけ…。
あーあ、
消えたいな…
あの後、普通に教室に戻った。眼帯を付け直した沙羅が、教室にいた。
……どうしたら、いいんだよ。
どうすれば、あいつを救うことが出来る?
どうすれば、どうすれば、どうすれば……
あれは…間違いなく"花咲病"……。治療法はまだ不明で、下手すると死に至る…。目に出来るのはまだ初期症状…だったはずだが…。
資料室……あるかなんてわからないが、探してみる価値はあるかもしれない。
……資料室にあった一冊の本。そこにはこう書かれていた。
『花咲病、全身に花が咲く病。』
治療法、不明。
寿命、発病してから1〜3年程で死亡する。
その他、発症者の花に触れると感染する恐れあり、また『花吐き病』も高確率で併発しやすく……
は…?死亡……?
考えたこともなかった。沙羅とはキラたちと同じくらい、時間を共にしている。そんな人が、急にいなくなるなんて……
……正直、伝えたくはない。
あいつの寿命が、もう長くはないかもしれないなんて、言いたくない。
俺が調べたことも、結局全て話した。
やはり、な……。
これを聞いて動揺しないやつなんて、余程の者だろう。というか、これをキラたちに伝えるべきか…、
そんなことを考えながら、窓の外を眺めていたときだった。
電話が鳴り響いた。マナーモードにし忘れていたらしい。偶々、俺とルビー以外はいなかったから平気だったが……。
『沙羅が、車に轢かれたんだ…、!!』
あーあ、今日はホント午前授業だけで良かったな〜。こういう時でもお弁当が必要なのはめんどくさいんだけど、まぁ単純に早く終わるんだしいいけど。
明日から、どうしよっかな。学校行きたくない。
正直、あの目をもう見られちゃったしな。綺麗で私は好きだけどね、痛いけど。
傘を持ってきた自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。
そんな時だった。なーんにも、考えないで歩いていたら、少し前方にとんでもないものが見えてきた。
あ、車が止まらない。そのままこっちに突っ込んでくる。
一度は逃げようと考えた。でも、自分の足は動こうとしない。
こんなことってあるんだなって思った。人を助けるっていう、いかにも漫画でありそうなシーンだなぁ…。ま、誰も助けには来ないんだけどね。
あぁ、もうこれならいっそ
あぁ、身体が血だらけなのに痛くない。アドレナリン出まくってるんだろうな……。
目で追ってみると、自分の身体か疑う程にグロい。
身体が熱い、意識が朦朧とする。
肝心の眼帯は……あぁ、外れちゃってる。ダメだなぁ、顔が見られちゃうじゃん。
あれ、紅葉じゃん……。まぁ帰り道一緒だし、そっか。
あぁ、伝えときゃ良かったかな。……ごめんザキ。
君のことが、好き、だ、ったよ……
これは、1年前の初夏の出来事だった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!