前の話
一覧へ
次の話

第1話

Prologue
281
2025/09/15 12:30 更新
死にたがりの少女がいた_____。













彼女はどこにでもいるような、高校1年生。
去年までは、なんら変わった様子もなかった。












沙羅
……あーー、学校行きたくないなぁ…
ただぽつりと呟いた。それは、泡となって消えていく。

去年まで、なんら変わりもなかったのに…なかったはずなのに、それは無慈悲にも突然起こってしまった。
沙羅
っ…、あぁ、痛いけど…綺麗だなぁ…
今日も咲いていた。今日は……彼岸花か……








「花咲病」それは顔のちょうど、右目のところにそこまで大きくない花が咲いてしまう。私はまだ初期症状だから…それまでで落ち着いているけれど…。









いつ死ぬかなんてわからない。そんな病気らしい。治療法なんて無いんだし。
沙羅
………
朝ごはんを作りながらお弁当を作る。別に、こういうのは苦ではないし、なんなら好きな方だし。朝ごはんを食べながら、スマホを見てみる。……なんだ、今日雨降るんじゃん…。傘持たないと…。あ、紅葉とは今日も一緒に行けそ、あとでメール返しとこ。

今日も眼帯をつけて学校に向かう。……キラたちにもまだ教えていない事だから…。





沙羅
行ってきまーす…
誰もいない家に対して言ったところで、当然帰って来ない。わかりきってたことだし、別に良いんだけど




















沙羅
おはよー紅葉〜
紅葉
おはよー!…今日も眼帯つけてるんだ
沙羅
まぁおしゃれですから
紅葉
え〜〜?ホントかなぁ?w
うぐ……ホントごめん紅葉…。言いたくても言えないことってあるじゃん?ね、しょうがないよ()



あーー、なにせこの純粋に対して嘘をついている自分が醜い……






まぁこれは私の日課。毎日憂鬱な通学を、純粋な君のおかげで楽しめてるんだから、それは感謝する以外ないでしょ。
沙羅
ところで、キラとはいつくっつくの?
紅葉
い、いいいいいいきなり何言い出すのさ!?
沙羅
いやー、全くそんな感じしないじゃん
あぁ、こんな毎日が続けば良いのになぁ…





















沙羅
はよー、キラ珍しく早いね
キラ
いやーちげぇんだよ……今日ザキに叩き起こされてさ〜…
ザキ
うるせぇ、今日起こしてくれって言ったのはどこのどいつだ?
キラ
……ダレダッタカナー
……相変わらずバカなんだなと、察してしまう。


そして毎日のようにこう問われる。
キラ
……なぁ沙羅、また今日も眼帯してんのか?
沙羅
まぁ見ての通り。こっちも好きでつけてるわけじゃないんだけどねぇ…
紅葉
……ならそれを外したらいいのに
沙羅
そういうわけにはいかないのよ、紅葉さんや
……ごめん、みんな。





















騙すような真似して、ごめん____
高1の入学式が終わって、一ヶ月が経ったくらいだった。

いきなり眼帯をして学校に来るようになったのは。
ザキ
……は?沙羅?
沙羅
…おはよー、ザキ
いつも通りと変わらない挨拶で、変わらない制服に身を包んで。……変わったのは目元だけ。








それからというもの、毎日眼帯をつけるようになっていた。入院もしていた。どうやって問い詰めても、おしゃれとか気分とか、茶化されて終わる。







それから、変わったことは……









沙羅が死にたがりになったこと…くらいか。











なんでかわからない、ただ「生きたくない」とか「消えたい」とか、そういうのを呟くようになった。



ただ、それくらい。それくらいなのに、ひどく胸騒ぎがする。……嫌な予感なんて、当たらなければいいのに。
紫霊
遊びに来たぜー!
ルビー
だから服を引っ張るなって言ってるだろ!
沙羅
まーた騒がしい奴らが来ましたなぁ
紅葉
やばい全く同感w
キラ
じゃあ、屋上行こーぜ〜










沙羅
あー、美味い。流石私だ〜
紅葉
ねね!沙羅の卵焼き食べたい!
沙羅
どぞどぞ!今日も美味いんだから〜!
キラ
……購買めっちゃ混んでたんだけど
ザキ
馬鹿だな、弁当忘れてくるなんて
キラ
うるせー!紫霊だって今日忘れたって
紫霊
なんでお前言っちまうんだよ!?
ルビー
言わなくても多分バレてたぞ
紫霊
うるせぇ!










あぁ、楽しい。……こんなに楽しいのに…楽しいからかな…

































生きたくない。
























そう思ってた時だった。突風が吹いてきたんだ。結構強い風。眼帯はきつく縛っていたからへーきだと思っていた。
…、誤算だった。判断を誤ってしまった…。

飛ばされちゃったんだ、私の眼帯。
キラ
あ!?沙羅ー、眼帯飛んで行っちまう……え…?
ルビー
…沙羅、その目……
紅葉
ぇ……?
紫霊
……眼帯、取れたけど…
私はその時、どうすればいいのかわからなくなった。壊れないと思っていた日常が、こんな形で終わりを迎えたんだから。

もうその時の記憶なんて残っていない。多分、この後…
沙羅
っ……ごめん
って呟いて、紫霊から眼帯を奪い取って、そのまま教室に戻ったんだっけ…。
紫霊
いっ!?…ちょっ!!
ザキ
沙羅…!!!
キラ
え、ちょっ!?ザキ!!?



あーあ、











































消えたいな…
あの後、普通に教室に戻った。眼帯を付け直した沙羅が、教室にいた。
紅葉
あ、沙羅…!これ、お弁当箱…、
沙羅
あぁ、ありがと
紅葉
それで…沙羅、えっと……
沙羅
ごめん、今日は1人にさせて
紅葉
あ、うん…わかったよ
……どうしたら、いいんだよ。

どうすれば、あいつを救うことが出来る?

どうすれば、どうすれば、どうすれば……
ザキ
(わからない……でも、あれは…)




















あれは…間違いなく"花咲病"……。治療法はまだ不明で、下手すると死に至る…。目に出来るのはまだ初期症状…だったはずだが…。
キラ
ザキ…?
ザキ
キラ、どうかしたか?
キラ
いや……もう授業終わって帰れるけど、まだ帰らないのか?
ザキ
……あぁ、ちょっと調べたいものがある。すまないが、先に帰っててくれ
キラ
……わかった、無理すんなよ
ザキ
あぁ…










資料室……あるかなんてわからないが、探してみる価値はあるかもしれない。
ザキ
(……行くか)




……資料室にあった一冊の本。そこにはこう書かれていた。











『花咲病、全身に花が咲く病。』
治療法、不明。
寿命、発病してから1〜3年程で死亡する。
その他、発症者の花に触れると感染する恐れあり、また『花吐き病』も高確率で併発しやすく……











は…?死亡……?
ザキ
(……沙羅が、死ぬ…?)
考えたこともなかった。沙羅とはキラたちと同じくらい、時間を共にしている。そんな人が、急にいなくなるなんて……





ルビー
……お疲れ、何かわかったか?
ザキ
ルビー…!?帰ってなかったのか!?
ルビー
キラから聴いていたからな。今日は風紀の仕事もなかったし、たまにはと思って来てみたんだが……
……正直、伝えたくはない。

あいつの寿命が、もう長くはないかもしれないなんて、言いたくない。
ルビー
俺も知ってる限りのことはあるが……第一、この病はネタ半分で流行っていたものじゃあないのか?
ザキ
俺も、そうだと思っていた。……が、稀に見る奇病らしい
俺が調べたことも、結局全て話した。
ルビー
なっ…!?それじゃああいつは……!
ザキ
………っ
やはり、な……。

これを聞いて動揺しないやつなんて、余程の者だろう。というか、これをキラたちに伝えるべきか…、






































そんなことを考えながら、窓の外を眺めていたときだった。




電話が鳴り響いた。マナーモードにし忘れていたらしい。偶々、俺とルビー以外はいなかったから平気だったが……。




ザキ
キラ……?
ルビー
今なら出ても良いぞ、誰も来ないだろうし
ザキ
あぁ、わかった










ザキ
もしもし、どうかしたか?
キラ
『ザキ!!やばい、早く来てくれ!病院に!!』
ザキ
は……病院?
ルビー
どういうことだ?
キラ
『ルビーも一緒か!?』
ザキ
あ、あぁ…今はまだ学校にいるんだが……
キラ
『なら話が早い!今、紅葉と紫霊も向かってるんだ!沙羅が……』























『沙羅が、車に轢かれたんだ…、!!』






























あーあ、今日はホント午前授業だけで良かったな〜。こういう時でもお弁当が必要なのはめんどくさいんだけど、まぁ単純に早く終わるんだしいいけど。



明日から、どうしよっかな。学校行きたくない。



正直、あの目をもう見られちゃったしな。綺麗で私は好きだけどね、痛いけど。


沙羅
あーあ、結局晴れてるんじゃんかー



傘を持ってきた自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。








そんな時だった。なーんにも、考えないで歩いていたら、少し前方にとんでもないものが見えてきた。


沙羅
(……へ、クラクション…?)



あ、車が止まらない。そのままこっちに突っ込んでくる。


一度は逃げようと考えた。でも、自分の足は動こうとしない。
こんなことってあるんだなって思った。人を助けるっていう、いかにも漫画でありそうなシーンだなぁ…。ま、誰も助けには来ないんだけどね。





































あぁ、もうこれならいっそ


























沙羅
(轢かれても、良いかな)



















あぁ、身体が血だらけなのに痛くない。アドレナリン出まくってるんだろうな……。

目で追ってみると、自分の身体か疑う程にグロい。
身体が熱い、意識が朦朧とする。

肝心の眼帯は……あぁ、外れちゃってる。ダメだなぁ、顔が見られちゃうじゃん。































お、おい…!誰か救急車を……!!

わ、わかりました……!

ねぇ…!この制服、あそこの高校じゃん…、!

嘘……ホントだ……連絡、入れといた方がいいかな…?

紅葉
あの……何かあったんです、か…!?






あれ、紅葉じゃん……。まぁ帰り道一緒だし、そっか。








あぁ、伝えときゃ良かったかな。……ごめんザキ。


























君のことが、好き、だ、ったよ……









































これは、1年前の初夏の出来事だった。

プリ小説オーディオドラマ