第29話

GW合宿⑮
1,024
2021/05/19 04:49
〜あなたside〜





『ほんなら、そろそろ戻るか。信ちゃんも心配しとるやろうから』





5分程の会話を終えた後、声を張った。





岩泉「そうだな、遅くなっても良くないしな」



侑「そうですね、俺たちは明日帰りますし」



及川「それじゃ、また今度ね」





そう言って徹がコタローのリードを引いた。





が、しかし。



コタローが私の前に座って一歩も動こうとしない。





及川「ちょっとッ、コタロー!もう帰るよ!」





リードをはじめにたくして引くも、びくともしない。





コタロー「くぅぅん...」





寂しそうに弱々しく鳴いた。





『コタロー、もう帰らなあかんから。な?』





コタローの頬を撫でるとその手にさらに顔を擦りつけた。



そんなあざといコタローを見て眉をひそめた。





『徹、ちょお時間ある?』



及川「え、まぁ、あるけど...」





いきなり問いかけられて言葉が詰まったように言った。





『ほんなら少しだけ遊ぼっか、コタロー』





そう言って笑いかけると、





コタロー「わんッ!」





と、元気よく返事をした。
┄┄┄┄LIME┄┄┄┄
小笠原あなた
信ちゃんごめん。
ちょっと帰り遅くなる。
侑も一緒おるから心配せんとってな。
北信介
北信介
わかった
侑おるなら心配いらんな
帰り気を付けえや
┄┄┄┄┄┄┄┄
返信がきたのを確認してスマホの画面を閉じ、ポケットにしまった。



〜及川side〜





あなたがスマホをしまったのと同時に服のすそをコタローが甘噛みして引いた。



当然、リードを持っていた岩ちゃんも連れて行かれた。





ぽつんと宮侑と2人きりで取り残された。





え、これ...



需要じゅようある???






しばらく沈黙が続いた。





及川「お前ってさ、あなたのこと、好きなの?」





沈黙を途切れさせたのは俺。



先日の練習試合の時に気になっていたことだ。





隣に立つ宮侑を見ると目を見開いていた。





及川「なんだよ、その顔」





ふんっと鼻を鳴らした。





侑「いや、話しかけられると思おとらんくて...あと......」





2、3度瞬きをして星空を見上げた。





侑「及川くんもあなたさんのこと好きなんやと思おとるから、そんなこと聞かれると想像つかんかったです」



及川「あなたのことは昔は好きだったけど、今は良き友達と思ってるよ」



侑「正直、俺...ちゃんとした恋愛初めてで...しかも追いかける側...分からないことだらけなんですよ」





初めて・・・という言葉に今度は俺が目を見開いた。





及川「マジで言ってんの?」



侑「こんな嘘つかないですよ、笑」





多分あなたも宮侑が好きなんだろうなって思う。



3年っていう短い間だったけど、1番近くであなたを見てきた自信はあるから。





及川「あなたがバレー辞めた時のこと、聞いた?」





もしこれから2人が付き合ったりするんだったら知っていた方がいいだろう。



あなたの過去。





侑「いや...怪我で辞めたとしか...」



及川「じゃあ話しとくよ。知ってて損は無いと思うから」







ーーー



ーー



プリ小説オーディオドラマ