太宰は何かに気づきその場を離れたのと、銀の閃光が奔るのが、ほぼ同時だった。
空間が切断された。
銀色の一閃が、一瞬前まで太宰の首があった部分を切断していた。
鎌の先端が太宰の服、皮膚、筋肉の一部を引っ掻き、血の飛沫を纏って通り抜ける。
太宰が呻き、痛そうに傷を掴み座り込んだ。
その少し離れた所で蘭堂の相手をしていた中也が、驚きに目を瞠った。
太宰を裂いた銀の閃光の正体__それは、人間の身長ほどもある長鎌だった。
その鎌の柄を握った老人が、くぐもった笑い声をたてた。
先代首領
因業……まさに因業。
この手で小僧の首を刎ねる日が来ようとは
先代首領が、しわがれた声で言った。
先代首領
その前に思い出話でも語りたいところだが……この身ではそれも敵わぬか
蘭堂が厳かに告げた。
先代首領
諒解しておるとも。
この魂は、異能にへばりついた破れ紙。
この身は内面も自意識もない自動人形じゃ……だが、それが不思議と小気味よい
先代首領が鎌を掲げる。
黒い布を全身に巻いた首領が空中に浮かび上がる……西洋の古い死神のように。
胸を真横に走る傷口を押さえながら、太宰は苦しそうに云った。
中也はちらりと太宰を見た。
太宰の傷は深い。
胸の中心を横切り、二の腕まで切り裂かれている。
傷口のまわりの衣服は既に血で赤く染まっている。
手早く処置をしなければ、命に関わる傷だ。
中也が顔を歪めた。
だが、太宰は傷が段々痛まなくなっている事に気が付いた。
太宰が自身の傷を見ると、先程より傷が治っている。
太宰が紫月を見ると、壁に寄り掛かりながら異能を使っている姿があった。
中也は、太宰の傷が紫月の異能によって治り始めている事に気付いていなかった。
質量がないため中也には防げない空間波の攻撃。
異能ではないため太宰には打ち消せない大鎌の刃。
太宰と中也が、たった一種類の異能によって完全に封殺されていた。
すると、壁に寄り掛かっていた紫月が異能力を発動した。
すると、太宰と中也の前。
先代首領の目の前に小さな女の子が現れた。
すると、小さな女の子_椿は先代首領の心臓に白い菊を刺した。
すると、たちまち先代の身体が刺された所から透けていく。
椿はそう云い、手を合わせた。
先代は穏やかな表情をしながら天へと登って行った。
絶句している蘭堂の後ろから太宰が近寄り、異能を発動させた。
すると蘭堂は異能が発動できなくなった。
そんな蘭堂の前から中也が異能を使い、先代の持っていた大鎌を蘭堂の胸に刺した。
中也が鎌を引き抜いた。
傷口から、おびただしい血液なあふれ落ちる。
周囲を浮遊していた瓦礫や石礫が、力を失ってがらがらと地面に落ちた。
気道に侵入した血液が、蘭堂の口からあふれ出してこぼれる。
己の血溜まりに落ちて混ざり、濡れた音を立てた。
明らかに___致命傷だった。
最近、投稿出来ずに御免なさい‼︎
凄く長い間期間を開けていましたが……。
これから頻度は落ちますが、投稿を少しずつやっていきたいと思います。
お待ち頂いた読者の皆様、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。