第6話

序章 第二幕 #1 『朝霧透也・小曾戸啓斗』
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2024/05/26 02:38
朱香、透也、啓斗、愛柚の4人で軽く自己紹介をした。
透也
年齢も性別も、死んだ時間もバラバラ…なんなんだろうな…ここは…
啓斗
夢見館、とか言っていたが…あの『案内人』はちっと怪しいな…
愛柚
悩みと…向き合う、と言ってましたよね…
朱香
あっ、
朱香
“皆さんで悩みを言い合ってみたらどうですか?何かその悩みの解決策が見つかるかもしれません!”
透也
おお!さんせー!!
朱香
“でも、提案者の私が言うのもなんですが…私は特に悩みという悩みが思いつかなくて。”
朱香
“恐らく吃音なんでしょうが、悩みというほど悩んでいないんですよね。”
愛柚
あ、実は…私も…
少しの間、静寂の時間が流れる。

そして、透也が口を開く。
透也
じゃ、俺から言わせてもらう。
透也
俺の悩みは、「友人関係」だ。
啓斗
ほう?詳しく聞かせてもらおうか。
透也
俺はどうも話をまとめるのが苦手で長くなるが、どうか許してほしい。
透也
俺はバレー部なんだが…いや、バレー部だったんだが、俺には、相棒と言ってもいいほど相性の良い奴がいたんだ。そいつと俺は、天才コンビだなんて言われてた。
透也
中3の高校受験の時、俺らに推薦が来た。だが、そいつは推薦を蹴ってより強豪の高校へ進学した。そこは頭が良いから、俺じゃいけないとこだった。
透也
そんで…この前、総体があって、第1回戦目の相手が、そいつの学校だったんだ。俺はそこで見事に負けた。惜敗、だなんてよく言われるけど、俺にとっちゃ、完敗だった。
透也
それだけでも十分な悩みだった。俺もちゃんと勉強すれば、まだあいつと一緒にバレーが出来たのかな、って思ってた。だが、俺には更に悩みの種が出来た。
透也
その日の夜に見た夢の中での出来事なんだが…俺とそいつが2人で歩いてて、俺だけが後ろから来る車に気付いたんだ。持ち前の瞬発力なら、そいつを助けられる距離だった。だから俺は、手を伸ばした。
透也
その瞬間、俺はふと思ったんだ。そいつと俺は小さい頃から比べられてばかりだった。学力も、容姿も、恋愛も…バレーの上手さだって比べられる。
透也
『お前さえいなければ』。そんな気持ちで、俺は手を引っ込めた。その後に鈍い音を聞いて目が覚めた。
透也
……俺は…あいつの友達を名乗っていいんだろうか…
啓斗
なるほどな…
朱香
“分かります、比べられるの…私もよく妹と比べられてたので…”
啓斗
悩みの解決は後回しだな。じゃあ、次は…俺の悩みでもいいか?
愛柚
はい、!
啓斗
あんがとな。悪いが、俺も長くなっちまう。
啓斗
…俺はさっき自己紹介の時言ったようにピアニストを目指して音大に通っている。
啓斗
本気で、目指してたんだ。小さい頃、俺をあやす時にピアノを弾いてくれた母親に憧れてな。
啓斗
倍率は決して高くない。なんなら、俺が通っていた高校の入試よりも倍率は低かった。でも全力で勉強して、音大に入学した。
啓斗
なのに…2年生になってから少しすると視界に黒い点が見えるようになった。そのうち治ると思って放置していたが、治るどころかどんどんと点は大きくなった。
啓斗
仕方なく病院に行くと、緑内障だと診断された。
早期発見・早期治療なら進行を遅らせることができる。だが、俺は発見が遅れたために治療も手遅れになるだろうと言われた。
啓斗
俺はまだ、ピアニストだと言えるような立場じゃなかったのに。これからもっと練習して、多くの人に感動を与えたかったのに…
啓斗
俺の夢は、緑内障に阻まれてしまった。
教授が俺と、俺の仲間たちのために演奏会も準備してくれてたのに…本当に、申し訳ない。
透也
………次、どっちから話す?
愛柚
んー…どうします、?
朱香
“私は悩みが思いつかないから、愛柚ちゃんが先に話しても大丈夫だよ。”
愛柚
私も思いつかないので…なんとも言えないですね…
啓斗
じゃあ思いつくまで、俺たちの悩みの解決でも手伝ってくれ(笑
朱香
…“ですね!”

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