朱香、透也、啓斗、愛柚の4人で軽く自己紹介をした。
年齢も性別も、死んだ時間もバラバラ…なんなんだろうな…ここは…
夢見館、とか言っていたが…あの『案内人』はちっと怪しいな…
悩みと…向き合う、と言ってましたよね…
あっ、
“皆さんで悩みを言い合ってみたらどうですか?何かその悩みの解決策が見つかるかもしれません!”
おお!さんせー!!
“でも、提案者の私が言うのもなんですが…私は特に悩みという悩みが思いつかなくて。”
“恐らく吃音なんでしょうが、悩みというほど悩んでいないんですよね。”
あ、実は…私も…
少しの間、静寂の時間が流れる。
そして、透也が口を開く。
じゃ、俺から言わせてもらう。
俺の悩みは、「友人関係」だ。
ほう?詳しく聞かせてもらおうか。
俺はどうも話をまとめるのが苦手で長くなるが、どうか許してほしい。
俺はバレー部なんだが…いや、バレー部だったんだが、俺には、相棒と言ってもいいほど相性の良い奴がいたんだ。そいつと俺は、天才コンビだなんて言われてた。
中3の高校受験の時、俺らに推薦が来た。だが、そいつは推薦を蹴ってより強豪の高校へ進学した。そこは頭が良いから、俺じゃいけないとこだった。
そんで…この前、総体があって、第1回戦目の相手が、そいつの学校だったんだ。俺はそこで見事に負けた。惜敗、だなんてよく言われるけど、俺にとっちゃ、完敗だった。
それだけでも十分な悩みだった。俺もちゃんと勉強すれば、まだあいつと一緒にバレーが出来たのかな、って思ってた。だが、俺には更に悩みの種が出来た。
その日の夜に見た夢の中での出来事なんだが…俺とそいつが2人で歩いてて、俺だけが後ろから来る車に気付いたんだ。持ち前の瞬発力なら、そいつを助けられる距離だった。だから俺は、手を伸ばした。
その瞬間、俺はふと思ったんだ。そいつと俺は小さい頃から比べられてばかりだった。学力も、容姿も、恋愛も…バレーの上手さだって比べられる。
『お前さえいなければ』。そんな気持ちで、俺は手を引っ込めた。その後に鈍い音を聞いて目が覚めた。
……俺は…あいつの友達を名乗っていいんだろうか…
なるほどな…
“分かります、比べられるの…私もよく妹と比べられてたので…”
悩みの解決は後回しだな。じゃあ、次は…俺の悩みでもいいか?
はい、!
あんがとな。悪いが、俺も長くなっちまう。
…俺はさっき自己紹介の時言ったようにピアニストを目指して音大に通っている。
本気で、目指してたんだ。小さい頃、俺をあやす時にピアノを弾いてくれた母親に憧れてな。
倍率は決して高くない。なんなら、俺が通っていた高校の入試よりも倍率は低かった。でも全力で勉強して、音大に入学した。
なのに…2年生になってから少しすると視界に黒い点が見えるようになった。そのうち治ると思って放置していたが、治るどころかどんどんと点は大きくなった。
仕方なく病院に行くと、緑内障だと診断された。
早期発見・早期治療なら進行を遅らせることができる。だが、俺は発見が遅れたために治療も手遅れになるだろうと言われた。
俺はまだ、ピアニストだと言えるような立場じゃなかったのに。これからもっと練習して、多くの人に感動を与えたかったのに…
俺の夢は、緑内障に阻まれてしまった。
教授が俺と、俺の仲間たちのために演奏会も準備してくれてたのに…本当に、申し訳ない。
………次、どっちから話す?
んー…どうします、?
“私は悩みが思いつかないから、愛柚ちゃんが先に話しても大丈夫だよ。”
私も思いつかないので…なんとも言えないですね…
じゃあ思いつくまで、俺たちの悩みの解決でも手伝ってくれ(笑
…“ですね!”
いいねして作者を応援しましょう!
が好きなあなたにおすすめの小説
コンテスト受賞作品
もっと見るmeiyoオーディオドラマ&主題歌 原案コラボコンテスト
公式TikTokの注目動画
もっと見る![チャレンジ作家案内ページへ](https://storage.googleapis.com/prcmnovel-tokyo-prod-official/banner/challenge-stop.png)
チャレンジ小説
もっと見る- 青春・学園
約束のうた
小学校の時仲が良かった女の子(結奈)があなたに託した最後の夢。「私の叶えられなかった夢、叶えてくれる?」──引きこもっていた時に聞いたある歌い手の曲。それがすごく心に刺さり、歌い手という存在を知る。結奈との約束を果たすためにやってみると… ────引きこもりを始めて1ヶ月たったある日、結奈との夢を見る。そこで立ち直り、お墓参りへ。そこには結奈がいて…不思議な男の子たちにも出会い…それからは中学にもちゃんと通い、晴れて高校生に!! 屋上で歌の練習をしていると、友達が教えてくれたとある歌い手からグループ組まないかと誘われ!?なんだかんだあってシェアハウスを始めたり、一緒に歌い手としての夢を叶えたり、恋なんてしてみたり? 大きな舞台で託された夢を皆に届ける為に、結奈に聞いてもらえるように。 あなたとMemoriesとたくさんの人を巻き込んで、いざ青春だ!!!!!!
- 恋愛
恋せよ、テレパスガール!
高校二年生の澪には、決して誰にも言えない秘密があった。それは人の心が読めてしまうということ。中学の頃、そのことが原因で仲間外れにされた経験を持つ澪。だから高校では友達の心と空気を読んで、周りに気を遣いながら大人しく過ごしている。そんなある日、澪は不良として有名なクラスメイト・風間とぶつかってしまう。揺れる彼の短い金髪。すくみ上がる澪に聞こえてきた、彼の“心”の声はーー 『ヤバ……。白坂さん、今日も可愛すぎる……』 ……え? 心を読んでしまったことで近づく、二人の恋の物語。
- ノンジャンル
ようこそ、夢見館へ。
ここは悩みを抱える方々が集まる、夢見館でございます。 おや、悩みの心当たりがない、と? 心の奥底を覗いて見てください…きっと、1つはあるかもしれません。ここは、そういう方々が集まる場所ですから。 おっと、また新しいお客様が来たようです。 それでは、ごゆっくり。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 障がい、友人関係、夢…それぞれ内容は違えど、人は誰しも、悩みを抱えている。 『夢見館』。そこは、悩みを抱える人々が集まる場所。 そこで出会う4人の『案内人』と共に、元の世界へ戻るために悩みに向かい合う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。