第3話

夜月優斗
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2026/01/17 17:23 更新
夜月優斗
夜月優斗
……は?
腹に開いたはずの穴が、じわじわと熱を帯びていく。
細胞が再生する音すら聞こえる気がした。
息が戻る。
視界が色を取り戻す。
世界が、再び音を持つ。
夜月優斗
夜月優斗
(竜魂は発現が遅いほど、特別な意味を持つって言われてたけど…)
(まさか…、俺は…死?)
全身に火が灯ったような感覚が走る。
熱い。燃える。
だけど苦しくない。むしろ、心が研ぎ澄まされていく。

拳を握る。
先ほどまで虚ろだった指先に、力が宿る。

炎が噴き出した。

真っ赤ではない。
夜空の月のように黒く、影のように揺らぎながら燃える炎。
夜月優斗
夜月優斗
この力は?
足を踏み出すたび、炎が地面を焦がす。
もう逃げない。
もう無力じゃない。

運命は、ようやく牙を剥いた。

振り返ると、風音はまだその場に崩れ、震えながら動けずにいた。
涙で濡れた瞳が、助けを求めるようにこちらを見ている。
夜月優斗
夜月優斗
──絶対に助ける。
言葉にした瞬間、身体の奥深くで炎が蠢く。
怒りか、恐怖か、それとも守りたいという願いか。
胸の奥で燃え続けていたものが、形になろうとしていた。
夜月優斗
夜月優斗
(炎……そうだ。子供の頃から考えてた技がある。)
一番弱かった頃の自分が、最後まで手放さなかった願い。
漫画みたいで、幼稚で、笑われると思っていた戦い方。

だが今は違う。
これは妄想じゃない。
俺の力だ。

俺は拳を握りしめ、地面へと叩きつけた。
夜月優斗
夜月優斗
──紅蓮斬ッ!!
その瞬間、地面に走った亀裂から炎が噴き出す。
刃の形をした炎が音を引き裂き、一直線に仮面の男へ走った。
男
なっ!?馬鹿な、貴様……!
逃げる間もなく、炎の刃が襲いかかる。

轟音。
爆炎。
風が巻き上がり、空気が震える。
男
ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!
男の身体は炎に切り裂かれるように燃え上がり、輪郭が熱で崩れていく。
雷の火花が最後に散り、そして、
煙と灰だけを残して、完全に消滅した。

静寂が戻る。
風だけが、焼け焦げた地面を撫でた。

俺はゆっくりと息を吐き、風音の方へ歩いた。

炎はまだ俺の拳に灯り続けている。
だが今のそれは、破壊の熱ではなく、
守る力のように温かかった。

俺は荒い息を整えながら、まだ熱を帯びた拳を見つめていた。
燃え上がる炎は次第に小さくなり、最後にはふっと消える。
夜月優斗
夜月優斗
これが…俺の力…
信じられない。
けれど、確かに自分が放った炎だった。
胸の奥で、何かが静かに灯っている。

振り返ると、風音が涙を浮かべながら立っていた。
震えた声が、俺の耳に届く。
白木風音
白木風音
優斗……ありがとう…っ!
涙は恐怖からではなく、安堵と感謝の色をしていた。

その瞬間、俺の中で何かが決定的に変わった。
守りたいと思った。
恐怖じゃなく、義務でもなく、心から。

風音は震える足で一歩、また一歩と近づいてきた。
夕日が差し込む中、頬を伝う涙が光る。
白木風音
白木風音
「……優斗……本当に死んだと思ったんだよ……!」
声は震え、涙で途切れながら必死に言葉を繋いでいた。
夜月優斗
夜月優斗
ごめん…心配かけた。
それしか言えなかった。
でもその言葉には、命を拾った実感と安堵が滲んでいた。

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