第26話

第26話「そばにいる理由」
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2026/03/28 19:34 更新
夜の街を、タクシーが静かに走っていた。

志歩は紫耀にもたれるように座っている。

窓の外の光が流れていく。

紫耀「……だるくない?」

あなたの下の名前「大丈夫」

少し遅れて返ってくる声。

いつもより明らかに弱い。

紫耀はちらっと横を見る。

目を閉じているあなたの下の名前。

頑張って起きているのが分かる。

紫耀「寝ていいよ」

あなたの下の名前「……寝たら家着いたとき起きれない」

紫耀「起こすから」

あなたの下の名前「……ん」

小さく返事をしたあと、数秒で呼吸が深くなった。

眠った。

紫耀は思わず息を止める。

(こんな無防備な顔、初めて見た)

仕事中はいつも完璧で、
隙なんて一つも見せないのに。

今はただ——疲れ切っている。

拳を軽く握る。

(どんだけ無理してたんだよ)



マンション前。

紫耀「あなたの下の名前、着いたよ」

肩を軽く揺らす。

あなたの下の名前「……ん……」

目を開けようとして、うまく開かない。

立ち上がった瞬間。

ふらっ。

紫耀「危な」

咄嗟に肩を支える。

体が軽い。

軽すぎて、逆に怖くなる。

紫耀「鍵どこ?」

あなたの下の名前「……バッグ」

ほとんど囁き声。

鍵を探し、部屋のドアを開ける。



部屋に入った瞬間。

あなたの下の名前の力が抜けた。

紫耀「おい、あなたの下の名前??」

ソファに座らせるつもりが、
そのままぐったりともたれかかってくる。

額に触れる。

——熱い。

紫耀「……マジかよ」

急いで靴を脱がせ、水を探す。

キッチンを開けると、
ほとんど使われていない冷蔵庫。

飲み物と食べ物が少しだけ。

(ちゃんと食ってねぇな、これ)

水を持って戻る。

紫耀「あなたの下の名前、ちょっと起きて」

あなたの下の名前「……やだ……」

弱々しい拒否。

思わず笑いそうになる。

紫耀「子どもか」

肩を支えてゆっくり起こす。

コップを口元へ。

あなたの下の名前は素直に少しだけ飲んだ。

その仕草が、いつもと違いすぎて。

紫耀の胸が締め付けられる。



あなたの下の名前「……ごめん」

突然つぶやく。

紫耀「何が」

あなたの下の名前「迷惑……」

紫耀「迷惑じゃねぇ」

即答だった。

あなたの下の名前「仕事……残ってるのに」

紫耀「今は気遣い禁止」

あなたの下の名前「……編集長に怒られる」

紫耀「ちゃんと言ったから大丈夫だって」

あなたの下の名前の顔が歪む。

次の瞬間、目が潤んだ。

あなたの下の名前「……ちょっと、しんどいかも」

初めて聞いた弱音だった。

紫耀は言葉を失う。

ずっと「大丈夫」しか言わなかった人が、
やっとこぼした本音。

紫耀「……うん」

静かに頷く。

紫耀「だから今日くらい頼れ」

そっと頭を支える。

あなたの下の名前は抵抗しなかった。



ベッドまで連れていき、横にならせる。

布団をかけると、
あなたの下の名前が紫耀の袖を軽く掴んだ。

紫耀「……ん?」

あなたの下の名前「……帰るの?」

眠そうな目。

いつもの強さがどこにもない。

紫耀は一瞬黙る。

そして。

紫耀「帰らない」

自然に答えていた。

あなたの下の名前「……そっか」

安心したように目を閉じる。

手は離れないまま。

数分後。

寝息が聞こえ始めた。

紫耀はベッドの横に座りながら、小さく息を吐く。

(俺、何やってんだろ)

でも——

離れる気がしない。

弱った姿を見た瞬間、
守りたいって気持ちがはっきりした。

仕事仲間でも、
同期でもなく。

もっと別の感情。

紫耀は眠るあなたの下の名前の前髪をそっと避けた。

紫耀「……無理すんなよ」

小さく呟く。

その夜。

紫耀は部屋の明かりを落とし、
静かに隣で朝を待った。

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