ピピピピ
ピピピピ
「んーもう朝か」
部屋にうるさく鳴り響く目覚まし時計を止める。
「美鈴~!学校遅れるわよ!」
「もう起きてる!」
1階から声をかけてきたお母さんにそう返して、私はベットから体を起こす。
そして、階段をおりてリビングに入り、ダイニングテーブルの席に着く。
食パンをもそもそと食べていると、
「そういや、美鈴、今年も行くの?花火大会」
と、お母さんが聞いた。
そうか、
もうそんな時期か。
確かにカレンダーを見るともう7月で、気温もだんだんあがって来ていた。
ニュースも熱中症の注意を呼び掛けたりしている。
花火大会__
5年前、小学4年生のあの日、私は初めて会った男の子に恋をした。
『大星くん』
あの時から1度も会ったこともない。
毎年花火大会に行っても会ったことは1度もなかった。
同じ学年の子には『大星くん』なんて人は1人もいなかった。
もう、会えないのかななんて思いつつ、まだ私は彼の事が忘れられないでいた。
「うん。行くよ」
「そう。もう受験生なんだから遊ぶのもほどほどにね」
「分かってるよ」
私はそう言って立ち上がり自分の部屋に戻った。
運命なんてもうないと思ってた___
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!