薄い朝靄が漂う森の中で、
松陽はいつものように焚き火をおこしていた
火のはぜる音が静かな森に溶けていく。
私たちが森で過ごし始めてから
早くも1ヶ月半が経とうとしていた
松陽が自作の竹の器に山菜の汁を分けながら、
穏やかに声をかける。
焚き火を消し、荷物を背負い、
松陽を先頭にゆっくりと歩き出す。
道中、この1ヶ月半の色んなことを考える。
すっ転んで泥だらけになった銀時
それを見て煽る晋助
それを見て呆れる小太郎
そして、それを見て微笑む松陽
川で水遊びして、ビショビショになったあと
焚き火で温まったり
多種多様な虫を捕まえて虫バトルしたり
葉っぱで音を鳴らしてみたり
色々な動物や植物に触れたり
本当に楽しかったし、心地が良かった。
森での生活は不便なことが確かに多かったけど
命を頂いて明日を生きる糧にしたり
自然と共存してたりしたからか
生きてるって感じがずっとして本当に楽しかった
なーんて物思いにふけっていたら
土から顔を出していた木の幹に気付かず
ひっかかってしまった
そう思って目を瞑ったが
私が地面と顔を合わすことはなかった
私の後ろを歩いていた晋助がバックハグのような形で
片腕だけで私を支えてくれていたのだ
くあっ顔がいい、、!
本当にびっくりした
心臓が口から出てきそう
紅くなりそうな顔を抑えながら前を向くと
すしざんまいをしている銀時がいた
すごい、、あの一瞬で私が転ぶとわかって
振り向いて抱き止めようとしてくれたのか
銀時は私には何も言わず
晋助を睨んで前に向きなおった
かっこいいなぁ2人とも
不器用だけど本当に優しい。
そうこうしながら私たちはまだまだ歩く。
道の両脇に伸びる木々が少しだけまばらになってきた。
光が強くなり、風が乾いた匂いを運んでくる。
森をでる、?
誰も何も言わないが、その疑問が胸を渦巻く
きっとみんな同じことを思っている
歩くほどに木々は背が低くなり、
足元の土も柔らかな腐葉土から、
乾いた黄土色に変わっていく。
森の音も小さくなっていく
鳥の声も、葉のざわめきも遠ざかり、
代わりに___
遠くで人の話し声のようなざらついた音が混じる
木々が最後に途切れ、ぱっと光が開いた。
そこには細い灰色の道___街道があった。
風が1ヶ月半の匂いをさらっていく。
同時に、新しい匂いを連れてきた。
松陽が私たちの頭を1人ずつ撫でていく
胸が高鳴った。
でも、ほんの少しだけ寂しい。
この緑の深さも、土の匂いも、
ここで一緒に笑った幸せな日々も。
全部を置いていくようで、
全部が背中を押してくれるようで。
背中に、1ヶ月半の森が寄り添ってくれていた。
前には、街の匂いと、これからの未来が広がっていた。
新たな道へ私たちは駆け出していく。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。