……これは、何かの悪夢じゃないか……そう思った。
だが、違う。
今目の前で起こった事……全て現実だ。
いつもそうだ……現実から目を背け、インターネットに引き篭もって。
こんな現実に私の居場所なんて無い、そう思っていた。
……今は違う。
目の前の現実からは逃げられない。
どんなに逃げたくても、手を伸ばしても……何も出来やしないんだ。
そう言ってみどりさんが取り出したのは、大量の三角フラスコ。
それが地面にばら撒かれ、ガラスの飛び散る音と共にブラックホールのようなものが空中に漂い始める。
……そこからは、絶え間なく【人では無いナニカ】が溢れ出てきて……汐風さんのお陰でこちらに危害は及んでいないが、これも時間の問題だろう。
……こんな状況を、見ているだけが嫌だった。
いっつも逃げてばかりの自分には、力なんて物はない……あの人達みたいな、力。
……だけど。
私だって……何か出来る事はやりたい。
もちろん、そんなの不可能だって分かってる。
だけど……いつまで経っても目の前の現実から逃げるのが、嫌だ。
嫌なんだ。
……そして、そんな自分が嫌だった。
そんな人生が、嫌だった。
……聞き覚えのある、声。
大好きだった、あの人の声。
決して色褪せる事のない素敵な思い出を沢山くれた、あの人……。
そんな彼女は、少し遠くを見つめながら、言った。
……本当に?なんて、疑問は感じなかった。
【人生は変えられる】……なんでこんな事すら分かっていなかったのか、不思議でたまらない。
今まで、人生なんてこんなものだと思ってた……けど。
変えられるのなら、やってやる。
私は……思いっきり、そう叫んだのであった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。