おらふくんは、その姿を見て……一歩前に出て、手を伸ばしかけるが……一気にそれを引っ込めた。
それを見た琴音は、どこか達観したように微笑んで、くるりとこちらに背を向ける。
彼女のその言葉に、この場はシンと静まり返る。
何故、楓が……という疑問もあるが、何の罪もない人……しかも、おらふくんの幼馴染の妹という立場の人間を巻き込んでしまったという罪悪感も湧いて来て、胸から少しの吐き気が込み上げてくる。
それを見かねたのか、僕の隣に立っていたぼんさんは、何も言わずに僕の肩に手を載せた。
……それが無性に、温かい。
きっと、ぼんさんだって辛いはずなのに。
こんな風に気を遣ってもらって……リーダー失格だな。
だけど、それでも……。
口元を少し緩ませて、ぼんさんはこちらの肩に手を置いたままそう呟く。
……「相棒」、か。
そんな風に指示を出していけば、ふと気付く。
琴音の方を向けば、彼女はこちらを真っ直ぐ見つめ返していた。
……よし。
これで、準備は整った。
僕達は互いに顔を見合わせてから、最初の一歩を踏み出したのであった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。