すると突然、帽子の人も空気が変わった。ピリついたような、殺気のある空気だった。

その人は周りの拷問器具を重力で浮かばせると、いよいよ私たちを本気で殺しにこようとした。

互いが互いを睨み合い、殺し合いの幕が上がる____はずだった。

軽々しくはなく、然しどこか軽やかな少年の声が、この空気を壊した。
銀髪銀眼の、少年だった。

少年は態とらしく微笑む。
私の好みの体型だ。抱きつきたい。
とまあそんなことは置いといて。

私は彼を知っている。
あなたの眷属の、影縫緋彩くん。（本来なら逆なんだが、力関係的にこうなっているのだ。）
最凶最悪の吸血鬼。

厄災の王。

諸悪の根源。

悪の所業。

全ての元凶。

邪悪な怪異。

正真正銘の____悪者。

彼の異名は、さまざまなものがあった。
私が最初に出会った頃は、忍ちゃん同様に口を聞いてくれるようなものじゃなかったが、然し今となってみれば、かなり明るくなった方である。

彼は私たちが来ることを予想していたようだった。

緋彩くんは腕を組んでは誇らしげに笑う。
“我が主様はモテモテじゃのう”____と。