風が強い日。
猫の鳴き声が聞こえてくる。
足に擦り寄ってくる猫を撫でながら思う。
そう思い立ち上がって空を見上げる。
あなたは、カシャッと大きな月を写真におさめる。
そのまま駅まで歩き、改札を通って電車に乗る。
空いた座席に座り、スマホの画面を覗き込む。
はっとして顔を上げ、自分の目を疑う。
そこにあったのは、焼けただれた鉄のように、赤黒く色褪せた世界だった。
不快なブレーキ音を響かせて、
電車は、ゆっくりと速度を落とす。
車内を見回すと、先程までいた乗客がひとりもいなくなっていた。
その時、スマホが震え、着信音が鳴り響いた。
画面に表示されているのは、非通知の文字。
あなたは恐る恐る電話に出る。
知らないアカウントからLINEの通知が来るがそんなことを気にせず、あなたは今いる車両を確認する。
車両の扉が開く。
『だぁ〜れだ』
肩を掴まれ、後ろから女性の声がする。
『ふふ』
振り返ると、思った通りの顔が花に覆われた化け物がおり、花の中から大きな目が開かれる。
振り返った拍子に足がもつれてしまい、その場に尻餅を着いてしまう。
その化け物は、あなたへと手を伸ばした。
振り返ると、赤髪の銃を持った男がいた。
男はあなたの横まで移動し、車窓を割った。
大我は頭から血を流しながら、ガラスの破片を拾い上げ、持っていた銃に詰め込んだ。
大我は銃を構え、「キクロス」を撃つ。
ガラスの破片が飛んできて、あなたの右足に鋭い痛みが走った。
必死に痛みに耐えていると、そこでようやく、大我があなたの存在に気づいた。
小首を傾げ、彼女を見下ろしながら、つかつかと目の前まで歩み寄る。
すると、大我はしゃがみ込み、あなたの頬をガシッと掴んだ。
大我はあなたの腰を後ろから掴むと、ひょい、と肩に担ぎ上げ、割れた窓ガラスの方へと歩き出した。
彼は窓際までやって来ると、そのまま座席に足をかけ、外をうかがう。
外は変わらず、赤い霧がかかっている。
大我の背中を叩いて抵抗をする。
大我は両腕であなたを持ち上げ、大きく振りかぶった。
まるで荷物のように座席の方へ投げ捨てられ、座席に倒れ込む。
大我が、隣の窓ガラスを殴りつける。
粉々になった破片を素手で拾い上げ、彼は窓枠を飛び越えると、そのまま濃霧へと消えてしまった。
彼は大きく伸びをすると、姿勢を正し、両膝を床に落とした。
横笛を手に取り、音符を吹き響かせる。
どこからともなく、雨露の香りを感じた、次の瞬間……がぽっ、と口から、気泡が漏れる。
あなたの意識が遠退いていく。
聞き馴染みのあるアナウンスの声で我に返る。
立ち上がろうとすると、右足が痛み、視界が傾く。
伯玖はあなたを座席に座らせ、彼女の足の傷を見る。
伯玖は小瓶を取り出し、中に入っているマッチを一本取って火を点ける。
彼は、ふっ、と息を吹きかけ、マッチの炎を消した。
あなたは知らないふりをして聞く。
伯玖は手に持っていた小瓶からマッチを1本取り出して、再び火を点けた。
伯玖は真剣な表情で彼女を見つめ、ふっ、とまた炎を吹き消した。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!