第2話

1話
86
2026/02/19 17:01 更新


風が強い日。
ニャー


猫の鳴き声が聞こえてくる。

(なまえ)
あなた
(今日は猫が多いな)


足に擦り寄ってくる猫を撫でながら思う。


(なまえ)
あなた
(風が強くて、猫が騒ぐ、明るい満月の夜には、なにか不思議なことが起こる。
なんて、とあるゲームで言ってたな)


そう思い立ち上がって空を見上げる。


(なまえ)
あなた
(綺麗な満月……。
いつもより大きい気がする)

あなたは、カシャッと大きな月を写真におさめる。

そのまま駅まで歩き、改札を通って電車に乗る。






空いた座席に座り、スマホの画面を覗き込む。



(なまえ)
あなた
(きれいに撮れてる)



車内アナウンス
『次は……きさらぎ駅……きさらぎ駅……』


(なまえ)
あなた
……え?

はっとして顔を上げ、自分の目を疑う。


そこにあったのは、焼けただれた鉄のように、赤黒く色褪せた世界だった。


(なまえ)
あなた
うそでしょ……


不快なブレーキ音を響かせて、
電車は、ゆっくりと速度を落とす。



車内を見回すと、先程までいた乗客がひとりもいなくなっていた。



その時、スマホが震え、着信音が鳴り響いた。

画面に表示されているのは、非通知の文字。



あなたは恐る恐る電話に出る。


???
『…………もうすぐ会えるよ』



(なまえ)
あなた
(間違いない……。
今起こってるこの状況、東京ディバンカーの特待生ちゃんが体験していた出来事に酷似している)


知らないアカウントからLINEの通知が来るがそんなことを気にせず、あなたは今いる車両を確認する。


(なまえ)
あなた
(7……これも、ゲームと同じ。
どういうこと?
東京ディバンカーの世界に転生しちゃった、的な?
なんで?
きっかけなくない?
不思議なことが起こるとかふざけて思っちゃったから?
私が特待生ちゃんと同じ立場、ということは……私、呪われる感じ?)



車両の扉が開く。





『だぁ〜れだ』




肩を掴まれ、後ろから女性の声がする。

(なまえ)
あなた
(「キクロス」さんですよね、はい……)


『ふふ』




振り返ると、思った通りの顔が花に覆われた化け物がおり、花の中から大きな目が開かれる。




振り返った拍子に足がもつれてしまい、その場に尻餅を着いてしまう。


(なまえ)
あなた
(目が合ってしまった……呪われちゃったよぉ……。
生で見るとほんとに怖いんですけど……)


その化け物は、あなたへと手を伸ばした。




???
ぎゃはは!
美味そうだなぁ、お前!
(なまえ)
あなた


振り返ると、赤髪の銃を持った男がいた。


(なまえ)
あなた
(星喰大我……!
本物……?
これって、現実?
夢?)


男はあなたの横まで移動し、車窓を割った。


(なまえ)
あなた
うわっ……
星喰大我
星喰大我
マラーブ


大我は頭から血を流しながら、ガラスの破片を拾い上げ、持っていた銃に詰め込んだ。


星喰大我
星喰大我
……いい子だから、そこ動くなよ。
お前も本当は、俺にやられてぇんだろ?


大我は銃を構え、「キクロス」を撃つ。


ガラスの破片が飛んできて、あなたの右足に鋭い痛みが走った。


(なまえ)
あなた
(痛っ……っ)
星喰大我
星喰大我
弾切れた〜。
面倒くせぇ……
(なまえ)
あなた
(やっぱり、夢じゃないのか……)
星喰大我
星喰大我
……ん?


必死に痛みに耐えていると、そこでようやく、大我があなたの存在に気づいた。



小首を傾げ、彼女を見下ろしながら、つかつかと目の前まで歩み寄る。


星喰大我
星喰大我
……お前、今の見たな?
(なまえ)
あなた
(はい、がっつり)


すると、大我はしゃがみ込み、あなたの頬をガシッと掴んだ。


(なまえ)
あなた
(ひぇ……〇~(꒪꒫꒪ ))
星喰大我
星喰大我
お前、よく見たら綺麗な顔してんなぁ?
(なまえ)
あなた
(こんなシーンなかった気がするんですが……?
というか、大我さん顔はいいけど、怖いです!)
星喰大我
星喰大我
……まぁいいや、ここに、捨てよ
(なまえ)
あなた
わっ


大我はあなたの腰を後ろから掴むと、ひょい、と肩に担ぎ上げ、割れた窓ガラスの方へと歩き出した。



彼は窓際までやって来ると、そのまま座席に足をかけ、外をうかがう。
外は変わらず、赤い霧がかかっている。


(なまえ)
あなた
まっ……ストップ、ストップ……!


大我の背中を叩いて抵抗をする。


星喰大我
星喰大我
暴れんなよ。
投げにくいだろが
(なまえ)
あなた
(投げられたら困るんですけど)
星喰大我
星喰大我
それじゃ、可愛子ちゃん、チャオ〜!
(なまえ)
あなた
うわっ

大我は両腕であなたを持ち上げ、大きく振りかぶった。

???
おいおいおい……大我さん、勘弁してくれよ
(なまえ)
あなた
(救世主……!)
星喰大我
星喰大我
あ〜?
草薙伯玖
草薙伯玖
おれの前でそんなことしちゃ、学園に言い逃れできないでしょうよ
星喰大我
星喰大我
……テメェ、邪魔すんじゃねぇぞ
(なまえ)
あなた
……っ!


まるで荷物のように座席の方へ投げ捨てられ、座席に倒れ込む。


(なまえ)
あなた
(助かった……)
草薙伯玖
草薙伯玖
大我さんの獲物を横取りしようなんざ、これっぽっちも思ってないよ。
見られたんだろ?
おれの方で後片付けしとくから、そう怒りなさんな
星喰大我
星喰大我
あ、そ?
じゃ、俺はアイツ追うわ
草薙伯玖
草薙伯玖
はいはい……あんま無茶しないでくれよ


大我が、隣の窓ガラスを殴りつける。


草薙伯玖
草薙伯玖
って、言ったそばからさあ……


粉々になった破片を素手で拾い上げ、彼は窓枠を飛び越えると、そのまま濃霧へと消えてしまった。



草薙伯玖
草薙伯玖
……さて、ひとまずここを出ますか


彼は大きく伸びをすると、姿勢を正し、両膝を床に落とした。

横笛を手に取り、音符を吹き響かせる。


(なまえ)
あなた
(透き通った音色……)


どこからともなく、雨露の香りを感じた、次の瞬間……がぽっ、と口から、気泡が漏れる。


(なまえ)
あなた
(息が……できない……)


あなたの意識が遠退いていく。















車内アナウンス
『…………ざいました。
間もなく、終点、新橋、新橋です』


聞き馴染みのあるアナウンスの声で我に返る。


(なまえ)
あなた
(本当に外が明るくなってる……)


立ち上がろうとすると、右足が痛み、視界が傾く。


(なまえ)
あなた
……っ
草薙伯玖
草薙伯玖
おっとっと、大丈夫か?
(なまえ)
あなた
は、はい
(なまえ)
あなた
(イケメンだぁ……)


伯玖はあなたを座席に座らせ、彼女の足の傷を見る。


草薙伯玖
草薙伯玖
あらら、一般人に怪我させちまって……こりゃ下手に触んない方が良さそうだ。
すまんね。
傷は後で何とかするから、先に頭ん中、消させてもらうよ


伯玖は小瓶を取り出し、中に入っているマッチを一本取って火を点ける。


草薙伯玖
草薙伯玖
これ、何だと思う?
(なまえ)
あなた
(「泡沫マッチ」)


彼は、ふっ、と息を吹きかけ、マッチの炎を消した。


(なまえ)
あなた
(伯玖さんには悪いけど、それ効いてないんだよなぁ……)
(なまえ)
あなた
……マッチ、ですか?


あなたは知らないふりをして聞く。


草薙伯玖
草薙伯玖
ん?
何のこと?
(なまえ)
あなた
何だと思う、と聞かれたので……
草薙伯玖
草薙伯玖
あれ、もしかして今、目、つむってた?
(なまえ)
あなた
いえ


伯玖は手に持っていた小瓶からマッチを1本取り出して、再び火を点けた。


草薙伯玖
草薙伯玖
この火、よく見ててくれる?
(なまえ)
あなた
はい……


伯玖は真剣な表情で彼女を見つめ、ふっ、とまた炎を吹き消した。


(なまえ)
あなた
…………
(なまえ)
あなた
(気まずい……)
(なまえ)
あなた
あの……
草薙伯玖
草薙伯玖
……ん?
(なまえ)
あなた
それが何かはわかりませんが……多分、効いてませんよ
草薙伯玖
草薙伯玖
……マジで?

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