第18話

17.
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2026/04/28 05:00 更新




震える指で、裏口のドアを施錠する。


 ドンッ…ドンッ!!


ころん
ひ、ッ……


ドンドン!と、ドア全体が揺れたのは、その直後だった。


それからドアノブが動き、鍵に阻まれてガチャガチャと固い音を立てる。


もう少しで男に入られるところだった。









ころん
……どうやって逃げる…?


肝心な問題が頭に浮かんだ。


二カ所ある出入り口は塞いでしまっている。


僕は立ち上がり、バックヤードからそっと店内の様子を窺う。


…………窓の外に男がいる。


僕の姿を求めて、店を覗きながら足早に歩いている。



________駄目だ。


あいつが外にいる限り、ドアからは出られない。

















ころん
……あっ、…!


考えるうちに、一つ思い浮かんだ。


例のハッチだ。


あそこは倉庫の奥だから、窓からは見えない。


僕は倉庫に置いた梯子を担いで、奥へと向かった。















開け放たれたハッチから、冷え切った外気が雪崩なだれ込んでいるのが分かる。


ハッチの真下に立ち、梯子を壁に押し付けた。


足元が安定していることを確かめ、僕は再び屋上へと向かった。













  ヒューーー…(寒風


ころん
っ…………


目を細めて、雪の上に這い上がる。


そのまま姿勢を低く保ちつつ、レンガの手摺りからそっと顔だけを覗かせる。


…………飛び降りるには高い。


倉庫内と違って足掛かりになるものがないし、下はアスファルトだ。


軽傷ではすまないだろう。


せめて、分厚い雪の上にでも着地できれば良いのだけど…………






そう思って雪の位置を確かめようとした時、僕の目に、とんでもないものが飛び込んできた。









ころん
~ッッ……!!




それは、街灯の下、道路脇の雪の上に、静かに横たわっていた。


仰向けの姿で、乱れたブラウンコートを、大量の血で染めて。






__________一吾さん!!


僕は心の中で叫んだ。


遠目にも、すでに彼が事切れていることは理解できた。


…………あの男にやられたのだ。


頬が濡れ、ピリピリと痛む。


いつしか溢れていた涙を手で拭い、僕は今一度、下の様子を窺った。


男は相変わらず、エントランスと裏口の間を行ったり来たりしている。


これでは降りる隙などない。


たとえ無傷で下りられたとしても、すぐに捕まってしまう。


もう残された手段はなかった。













…………ただ、ある一つを除いては。


一瞬ためらったが、もう他に助かる道はない。


僕は覚悟を決め、雪の上を静かに移動した。


積まれているコンクリートブロックの一つを手に取る。


持ち上げると、ゴツゴツとした表面に皮膚を削られるかのような、嫌な触感が走った。


ずっしりとしたブロックを抱え、僕はもう一度、手摺りから下の様子を窺った。









……すぐ真下に男がいる。


立ち止まって、窓から店の中を覗き込んでいる。








________と、その視線が、不意にこちらへ向けられた。


見つかった________!!


もう躊躇っている暇はない。


僕はブロックを抱えた両手を手摺りから突き出し、そのまま手を離した。


ブロックは、一瞬風の抵抗を受けながらもそれを無視して、まっすぐに落ちていった。










グシャリ、と鈍い音がした。


見下ろすと、男が雪の上に倒れていた。


ころん
ッ…………










僕はハッチから倉庫に戻った。


震えと涙が止まらない。


よたよたと裏口から外へ出て、そのまま近くの交番に向かった。
































その後僕は交番で、警察に事情を話した。


警官は、僕を連れてカフェへと向かった。












________男の死体は、どこにもなかった。


それどころか、探偵の死体すらない。


雪の上に広がっていた大量の血痕も、跡形もなく消え失せている。


…………どう言うことだろう。


また悪い夢でも見ていたのだろうか。


とにかく警察は、「事件性なし」と判断したらしい。


動転する僕をパトカーで家まで送り届け、後のことは任せてくれと言って、去っていった。












これで________終わったのだろうか。


もう何も、怖いことは起こらないのだろうか。


分からない。


ただ、今は早く日常に戻りたかった。


家でゆっくりと休みたかった。


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