--- 海の家 さざなみホテル ---
天候が急に悪くなり、近くのホテルに3人で避難することになった。
父は買い出しに出るから、二人は部屋で待っていろと言われて 母と部屋のソファに並んで座った 。
海の家で一通り話を聞いた 。
父さんのおじいちゃん…、つまり私のひいおじいちゃんは 、「愚力」を使って一族を増やそうと企んでいたらしい 。
癒療記には 、「安直な考えで増やしてはならない一族」とされているし 、きっと私一族が増え、血が濃くなってしまえば良くないことが起こるんだろう。
だからそれを阻止するために父はひいおじいちゃんのところから、私のおじいちゃん…つまり父のお父さんの力も借りて足抜けした 。
…その際におじいちゃんは殺されてしまったらしい 。
ただ 、父は一族の中でまあまあ愚力の力が強かったからか 、執拗に向こうから嫌がらせなどを受けていたらしい 。
私がずっと忘れていた存在 。
私には兄が居た 。
血は繋がっていなかったらしい、兄は養子だったから。
私が記憶を無くした小学生4年生の頃に、兄はケガレの力を利用して、あちら側に行ってしまったらしい 。
雨が降り続け、荒れる海を窓から眺めながら、母さんは言葉を続けた。
もやがかかっている、とかそういうものじゃなくて
最初からそこには存在していなかった
そんな感覚で、
話を聞いていた時、何かの勘違いだと思った
…なら、わたしは
兄さんが 、なんで
うっすらとだが 、本当に小さい時光の家に泊まった記憶だけはある 。
覚えていると言うことは、兄さんはこの時直接的には関与してないんだろう 。
そう言って母は 、儚げに微笑みながら私の頭をそっと撫でてくれた。
… じゃあ 、
あの時の電話 、
「 次は ちゃんと連れていくから 」
…兄さんが 来る
わたしの事になると、父に危害を加えるぐらいの相手だ
わたしは母さんと今ここに居ていいのか ?
母さんにまで、なにか起こったら…
( プルルルル 、プルルルル …
( パタン
それだけ言うと母さんは 部屋を後にした。
電話を確認すると 、佳紀からだった 。
--- 2日後 ---
--- 病院 ---
あの後 、弓弦翎がホテルから希望ヶ山に帰ってきて 1日後 、よしきから光が起きたと電話があって病院まで来た 。
そこにはちょうど暮林さんも居た
弓弦翎が着いた頃には、何か色々話し終わっていた様で、3人とも少ししんみりした雰囲気になっていた 。
ベッドの側まで駆け寄った弓弦翎に思い切り抱きついてきたヒカルを、弓弦翎本人は顔色を変えることなく不安そうな顔で聞いた 。
弓弦翎から聞かされたのは 、自分達夏目家の家系が 、ヒカルに関係しているかもしれないこと だった。
いつもおれをまっすぐ見てくれていたゆづるの瞳が 、不安に揺れているのがわかった 。
…おれも不謹慎や 、ゆづる本人が不安なのは当たり前やのに
それに怯えとるゆづるが、いつもより ちゃんと人間らしく見えて
ひどく綺麗なんや
そんな呪いとも言える言葉を 、簡単に言ってしまう
でもゆづるは 、嫌な顔ひとつしないで 、おれのほしい言葉をくれるんや
そんな好きなもんばっかで 、浸かってしまえば
離したなくなるのは 当たり前やんな
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!