部屋に入った瞬間、シャルナークは満足そうに頷いた。
基準が低い。目の前の彼はどうやら一度もクリスマスを誰かと過ごしたことがないらしい。
テーブルの上には近くのコンビニで買った小さなホールケーキ。
そして紙皿とフォーク二本。
シャルはそれを見て、子供みたいに目を輝かせた。
私がケーキを切っている間シャルは珍しく1人でソファに座って待っていた
コイツにも可愛いところがあるのだなと思ってしまう。
何言ってるんだコイツは。急に理解不能なことを言ってきたせいでつい声に出てしまった。
シャルはフォークを持ったまま、口を開けて待つ。
本気。瞬きもしない。
私が渋々ケーキを刺して差し出すとシャルは素直に口を閉じる
もぐもぐ
部屋にはシャルの咀嚼音が響く。
馬鹿な男だ、誰が食べさせてもケーキの味なんて変わるわけないのに。
シャルは大きなイチゴとケーキを刺して私の方にフォークを向ける
間延びした声。
私は仕方なく口を開ける。
生っぽいクリームにスーパーで売られているものより少し小さい苺とシャルの唾液が混ざる。どろどろと甘くてつい吐き出してしまいそうだ
シャルはそれだけで嬉しそうに笑う。
もう治ったと言って包帯を外した腕をテーブルに乗せて、体を少し近づける。
でも結局もう一口。
シャルは私にケーキを食べさせたフォークをペロペロ舐めてまたケーキを食べ進める。
こういうのは恥ずかしがる必要はないため短く答える。
こういう姿を見ていると彼は本当に頭が悪いんだなと思ってしまう。たった2文字の言葉で馬鹿みたいに喜んで、しかもそれをクリスマスの魔法だと思っているから。
夜になって、ソファで並んで座る。
テレビはついてるけど、誰も見てない。
私は何も言わず、シャルの頭に手を置く。
撫でる。いつも通り。
シャルはそのまま目を閉じる。
独り言みたいに。
私は答えない。ただ機械みたいに彼の撫で続ける
クリスマスは静かに終わる。ケーキも減って、部屋も暗くなって。
特別なことは何もない。
ただ、あーんして、好きって言って、撫でただけ。
それでシャルは満足で、
私も特に問題を感じない。
だから来年も、
同じことをする。
きっと、同じ顔で。
早く死んでくれないかなあ。
メリークリスマス!
クリスマス前に彼女と別れたので私は地獄のクリスマスでした♩












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!