第68話

65. 手と手
1,732
2022/10/08 14:00











「俺に全部……見せて」










「……先輩。」
























彼と距離が近すぎて






頭回らなくて






言葉が出ない






彼の目にかかった前髪






少し乱れたそのスーツ






あの時と同じ。






会社で













あの夜と同じ。






その姿に思わず






吸い込まれそうになる

















道枝駿佑
……え、と

















そして近づいてくる彼の手。








長尾くんに……なら








ふいにそう思った








でも







その顔に近づいてくるその手が








大吾くんと重なって







無意識に







身構えてしまった。












身構えるつもりなんて……無かったのに、








 



道枝駿佑
…………













長尾謙杜
……大丈夫です





長尾謙杜
僕は……





長尾謙杜
僕は先輩のこと





長尾謙杜
傷つけたりしません





長尾謙杜
……絶対に







そう話す彼の声は




優しくて




暖かかった。





長尾謙杜
だから……





長尾謙杜
僕に





長尾謙杜
見せて欲しい……





長尾謙杜
知りたいんです





全てを。





長尾謙杜
先輩のこと……





長尾謙杜
駄目……ですか















本当は





全てを晒して





楽に……なりたい





誰かに……知って欲しい





けど





でも…





怖い





彼の反応が





彼の表情が。





怖いから……













長尾謙杜
……





長尾謙杜
どんな姿でも





長尾謙杜
受けとめる





でも





長尾謙杜
でもまだ





長尾謙杜
無理なら





長尾謙杜
嫌なら





長尾謙杜
僕はいつまでも





長尾謙杜
先輩がそうなるまで





長尾謙杜
……待ちます





長尾謙杜
諦めたりは……しない













本当は……














長尾謙杜
お風呂……準備しますね

















違う……














長尾くんが起き上がろうと




体制を変え始めた。

















俺は…………










道枝駿佑
待って、










行ってしまいそうやったから









俺は長尾くんの襟を掴んで








引き寄せた。







さっきより距離が近くて







息が苦しい







けど







俺は、







長尾くん……に、
















                                     「嫌なんて……言ってへん…」





本当はもっと




ちゃんと




……知って欲しい











「……」









「 ?」








































この夜瞳に……光がさした。

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