第72話

最後の一枚 ー別れの寸前ー
234
2024/03/08 14:24
彼女らはひたすら歩き続け、出口まで足を止めることなく進める。
 
水戸 結愛
水戸 結愛
…(キョロキョロ

程なくして歩いた頃、彼女は突然まるで探し物をするかのようにキョロキョロと辺りを見回した。
 
赤木 結斗
赤木 結斗
急にどうしたんだお前
なんか探しモンか?

気になった彼が、彼女にこう問いかける
すると、彼女は少しだけ申し訳なさそうな感じで
こう言った。

水戸 結愛
水戸 結愛
あの…ね
今更感すごく強いんだけどさ


水戸 結愛
水戸 結愛
あの黒いモヤってさ…
これ以上は追いかけてこないのかな?

彼女が辺りを見回していた原因は黒いモヤがどこかに潜んでないか、これ以上追いかけてこないのかという心配から来たものだった。 






だが、心配している彼女とは正反対に彼は笑い飛ばしながらこう言った

赤木 結斗
赤木 結斗
んだよ…そーいうことかよ!
水戸 結愛
水戸 結愛
えっ?
赤木 結斗
赤木 結斗
アイツはな…
ここまでは来れねぇんだよ!
水戸 結愛
水戸 結愛
そ、そうなの…?
赤木 結斗
赤木 結斗
あぁ!お前も見ただろ?
俺らがあのクソデケェ
壁穴に入ったことで
アイツは悔しそうにしてただろ?
水戸 結愛
水戸 結愛
…確かに!
赤木 結斗
赤木 結斗
普通ならその壁穴に入って
まだまだ俺らを追い回すんだろう
けどよー…
赤木 結斗
赤木 結斗
アイツはただただ
悔しがるだけで
走っていく俺らを見送ること
しかできなくなっちまってんだわ!
水戸 結愛
水戸 結愛
入れなくなってる…ってこと?
赤木 結斗
赤木 結斗
まぁ、そうだな!
厨二臭ぇが…
結界が張られているとでも
言っとくか!
赤木 結斗
赤木 結斗
だからもう心配することなんざ
なんもねぇよ!
水戸 結愛
水戸 結愛
そ、そっか…
 
赤木 結斗
赤木 結斗
それにアイツから逃げ切る
方法なんざ知らなかったら…

赤木 結斗
赤木 結斗
お前の腕を引っ張ってまで
あんな行動取れなかったしな!
水戸 結愛
水戸 結愛
……!
水戸 結愛
水戸 結愛
……
赤木 結斗
赤木 結斗
ん?急に黙り込んで
どうした?


黙り込んだ彼女だったが、その口はすぐに開かれた。
 
水戸 結愛
水戸 結愛
…ねぇ、結斗
赤木 結斗
赤木 結斗
あ?どうした?
水戸 結愛
水戸 結愛
結斗ってさ…





水戸 結愛
水戸 結愛
ここはあの世って訳でもないのにさ…
どうしてこの空間のことを
知り尽くしてるの?
水戸 結愛
水戸 結愛
そもそも…どうして
私がこの空間にいるってことが
分かったの?
 

その質問は一部の人にとってはぶっ飛んでいるように見えるが彼女は真剣そうな様子でその質問を彼に投げかける。


だが彼の答えは…


赤木 結斗
赤木 結斗
それは…俺にもさっぱり
分かんねぇんだわ…


なんと「分からない」とのこと
 
水戸 結愛
水戸 結愛
わ、分からない?
赤木 結斗
赤木 結斗
答えるのが面倒だから
そう言った訳じゃねぇ。
そこは理解して欲しい
水戸 結愛
水戸 結愛
それは、分かってるよ…
赤木 結斗
赤木 結斗
まぁ、その…なんつーか
最初から全て分かるんだよな
この空間について
赤木 結斗
赤木 結斗
黒いモヤ、白い花、出口となる
「扉」も…どれもこれも全部な。
赤木 結斗
赤木 結斗
特別誰かに教えられた
わけでもねぇのに
全てを知り尽くしてる
かのように次々と言葉が出るんだわ
赤木 結斗
赤木 結斗
どうやってあの世から
この空間に入ってこれたのかも
マジで分かんねぇんだ…
赤木 結斗
赤木 結斗
分からねぇが…

赤木 結斗
赤木 結斗
神かなんかが
お前のピンチを知らせてくれた
んじゃねぇか?

彼はそれをも笑い飛ばす

水戸 結愛
水戸 結愛
……






水戸 結愛
水戸 結愛








水戸 結愛
水戸 結愛
フフッ何それ


それを見た彼女は少しだけだがまたもや微笑みを見せる。



赤木 結斗
赤木 結斗
おっ!お前今笑ったか?
水戸 結愛
水戸 結愛
フフッ
何があっても笑い飛ばしてみせる
のはホント変わらないね
水戸 結愛
水戸 結愛
それを見て
私…ちょっと安心したかも
赤木 結斗
赤木 結斗
そっ……そうかよ…(キュン
水戸 結愛
水戸 結愛
フフ…顔赤いよ?
赤木 結斗
赤木 結斗
う、うるせぇな…

彼は顔を赤くしながら思わず下を向く。

そして数秒時間をおいた後、彼が口を開いた。
 
赤木 結斗
赤木 結斗
あ、そうだ
今ならアレについて話せる
水戸 結愛
水戸 結愛
…アレ?
赤木 結斗
赤木 結斗
お前が気になってたやつだよ
水戸 結愛
水戸 結愛
あっ…!もしかして
この花とあの子達のこと?
赤木 結斗
赤木 結斗
あぁ
赤木 結斗
赤木 結斗
どうしてあの子らには
見えなかったのか
どうして俺やあの黒い奴には
見えたのか知りたかったんだろ?
水戸 結愛
水戸 結愛
う、うん!
赤木 結斗
赤木 結斗
アレは…この花は…
































赤木 結斗
赤木 結斗
死んだ奴しか見えねぇんだよ



 





水戸 結愛
水戸 結愛
…………はっ?

赤木 結斗
赤木 結斗
あの3人は今も元気に生きている。
卒業してそれぞれ自分の道を歩んでんな。
赤木 結斗
赤木 結斗
友達の縁は切れてなくとも
会うこと自体難しいだろうな。
水戸 結愛
水戸 結愛
ちょ…ちょっと待って!


彼女がそう言ったと同時に、足を止め
彼女は彼の腕を軽く掴みながらこう言った。
 
水戸 結愛
水戸 結愛
死んだ人にしか見えない…って
じゃあ恵美梨は?
恵美梨は今どうなってるの?
赤木 結斗
赤木 結斗
ちょ…おい!
水戸 結愛
水戸 結愛
ほ、本当に死んでるの?
水戸 結愛
水戸 結愛
ねぇ、どうなの?


彼女の質問ラッシュが何度も飛び交うが


赤木 結斗
赤木 結斗
はぁ…落ち着け。というか
まずこの手を離してくれねぇか?
水戸 結愛
水戸 結愛
あ…ごめん
彼は冷静に対処する。
赤木 結斗
赤木 結斗
そもそも立ち止まること自体
命取りになるんだぞ?
自分の立場をちゃんと理解しろ
水戸 結愛
水戸 結愛
う…うん
 
彼女はそっと彼の腕を離した後、再び出口まで歩き出す。


赤木 結斗
赤木 結斗
安心しろ恵美梨は
死んでねぇよ
水戸 結愛
水戸 結愛
じゃ、じゃあなんで…
赤木 結斗
赤木 結斗
そもそもアレは
恵美梨に化けた偽物だろ
水戸 結愛
水戸 結愛
偽物ではあるけど…
赤木 結斗
赤木 結斗
そもそもお前の親友が
あんな言うはずねーだろ
お前と常に一緒だったから
よく分かる
水戸 結愛
水戸 結愛
…あの黒いモヤは死んでるってこと?
赤木 結斗
赤木 結斗
まぁ、そうなるな。
怨霊となって精神が弱ってる
お前を狙ったんだろ
赤木 結斗
赤木 結斗
そして
親友に化けて道連れに
しようとしたって訳だな。
赤木 結斗
赤木 結斗
その上手い話にお前の心までもが
侵食されていって
それでお前も「死にたい」って
思ってしまったということだ。
水戸 結愛
水戸 結愛
よく分からないけど…そう思っとこ
水戸 結愛
水戸 結愛
あの黒いモヤは
幽霊ってことかな?
赤木 結斗
赤木 結斗
幽霊かどうか
よくわからねぇが恵美梨が
生きていることは確かだ


赤木 結斗
赤木 結斗
…ただちょっと気をつけろ




赤木 結斗
赤木 結斗
あの黒い奴変なことを言ってた
赤木 結斗
赤木 結斗
「お前が死を選んだことで私は死ぬ」
って何回も言ってただろ?
水戸 結愛
水戸 結愛
…!言ってた…!
赤木 結斗
赤木 結斗
だから現世に戻ったら
恵美梨のことも気にかけてやってくれ
赤木 結斗
赤木 結斗
そして何かあったら
お前が守ってやるんだ
水戸 結愛
水戸 結愛
…うん!
赤木 結斗
赤木 結斗
お前が極道だと知らなくても
恵美梨はきっとお前を頼るだろうな。
赤木 結斗
赤木 結斗
恵美梨に極道に入ったことは
伝えないままで大丈夫だ。
あと、このことは恵美梨には
無理に話さなくていい
水戸 結愛
水戸 結愛
……うん


水戸 結愛
水戸 結愛
あと…私が極道になったこと
知ってたんだ…
赤木 結斗
赤木 結斗
とうの昔に知ってる
水戸 結愛
水戸 結愛
…ひ、引いたりしない?



赤木 結斗
赤木 結斗
当たり前だろ!
赤木 結斗
赤木 結斗
俺はもう死んでるから
お前が極道になろうと
裏社会とは無関係だ。
だが、生きてたとしても俺は
なんとも思わねぇな!
水戸 結愛
水戸 結愛
強いね…
赤木 結斗
赤木 結斗
そうか?
ま、お前が極道になっても
お前はお前のままで
昔から何も変わってねぇな!
水戸 結愛
水戸 結愛
……


水戸 結愛
水戸 結愛
……


水戸 結愛
水戸 結愛
そのセリフ…さっき私が言ったのと
同じだね
赤木 結斗
赤木 結斗
パクったって訳じゃ
ねぇからな!
水戸 結愛
水戸 結愛
フフッ






それから程なくして歩いたころ…










赤木 結斗
赤木 結斗
結愛!あれを見ろ!
 
彼が奥の方に指を刺す

水戸 結愛
水戸 結愛
…!扉



奥の方に目をやると…まだ遠いところにあるのか、豆粒サイズくらいの扉がそこにあった。


赤木 結斗
赤木 結斗
向こうの扉を潜ればこの空間とも
おさらばだ!
赤木 結斗
赤木 結斗
ほら、一枚染まらないうちにさっさと
行くぞ!
水戸 結愛
水戸 結愛
うん!


そして数歩足を進めた時


水戸 結愛
水戸 結愛
あっ…!







彼女がふと何かを思い出したかのように声を上げる




赤木 結斗
赤木 結斗
ん?今度はなんだよ?




水戸 結愛
水戸 結愛
…あのね
私後一つ気になったことがあるの
赤木 結斗
赤木 結斗
ん?なんだ






水戸 結愛
水戸 結愛
あの…私が
あの黒いモヤに追い詰められて
いた時さ結斗はこう言ってキレてたよね…
水戸 結愛
水戸 結愛
「今の結愛を苦しめてるのは
『神崎 叶翔』じゃねぇ
ドス黒いテメェなんだよ」って…
赤木 結斗
赤木 結斗
水戸 結愛
水戸 結愛
ねぇ結斗…











水戸 結愛
水戸 結愛
叶翔のことなんで知ってるの?


赤木 結斗
赤木 結斗
………











赤木 結斗
赤木 結斗
………













赤木 結斗
赤木 結斗
………




水戸 結愛
水戸 結愛
ゆ、結斗?






その時彼がぼそっと呟く…





赤木 結斗
赤木 結斗
やっと…話せるのか…







赤木 結斗
赤木 結斗
いや…コレが1番重要だったのかも
しれねぇ…


水戸 結愛
水戸 結愛
結斗…?







赤木 結斗
赤木 結斗
結愛…俺はな…





赤木 結斗
赤木 結斗
俺はな…





彼は何か言いたげだったが…










































もう…それをも言う余裕がなかった……






























なぜなら……









赤木 結斗
赤木 結斗
……ッ!?






























彼女の命は……タイムリミットに近かったのだから…




水戸 結愛
水戸 結愛
ど、どうしたの!?
赤木 結斗
赤木 結斗
……
 


赤木 結斗
赤木 結斗
クソッ…ここでかよ…


その花が染まるタイミングはまるで見計らっていたかのように……





そして彼は…彼女の腕を勢いよく引っ張る



赤木 結斗
赤木 結斗
結愛、時間もねぇ
急いで行くぞ
水戸 結愛
水戸 結愛
ちょっ…どうしたの!?


赤木 結斗
赤木 結斗
…お前のその花が一枚また染まり出したんだ
水戸 結愛
水戸 結愛
えっ…






水戸 結愛
水戸 結愛
じゃあ…もう
赤木 結斗
赤木 結斗
…あぁ










赤木 結斗
赤木 結斗
お前とはもう…ここで別れるんだよ

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