病院ーー
「二宮さんの部屋は305です。
二宮さん……今日の朝お目覚めになられました。」
あれほど暗かった気分が一気に晴れた。
落ち着かないと、と思うのに
嬉しすぎて小走りになる。
305
二宮和也様と印刷されている文字をなぞる。
落ち着いて……
深呼吸をして中に入った。
そう呟くと、窓の方を向いていた彼が
ゆっくりとこちらを向いた。
その瞬間、目の前がボヤけて見えなくなった。
少ししょっぱい水が頬をつたう。
そう言って彼の横にある椅子に座り泣き続けていると
彼は微笑んでずっと私の頭を撫でてくれた。
涙が少し乾いてきた時
唐突にそう言った。
彼を見ると、「どうして?」と言いたそうな顔をしていた。
そう言っても、彼は口を閉じたまま
悲しそうな、、複雑な表情をしていた。
思い口を開くように彼が呟いた瞬間
勢いよく……とまでは行かないが
私が開けた時よりかは乱暴に
ドアが開いた。
それまで私たちは夢中で気づかなかったけど
和也は、困ったような表情を浮かべた。
そして、
私たちは耳を疑うような言葉を耳にした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!