美しく澄んだ青空は、昨日の地獄を夢に思わせる。スメールの民は今日も平和に知識を交換し合っている。
あの後、あなたと放浪者の距離は一層縮んだように思える。放浪者はもともとあなたのことがちっとも気になっていなかったわけではないと思うが、今回の件を通して少しは丸くなり……素直になった、ような気がする。
あなたが上目遣いで放浪者を見、放浪者は怪訝げに眉をひそめた。
ナヒーダはそっと草むらに身を隠す。民に見つかれば放浪者達に見つかり、二人に見つかればあなたは目と口を丸くして、放浪者には「神が何をやっている」とでも怒鳴られそうだ。
しかし、外にやってきたばかりの子供であるナヒーダは、そんなスリルがたまらなかった。
(ふふっ、とても面白いわ)
ナヒーダはこの状況を大いに楽しんでいる。いわゆる少女漫画のシリーズを新作が出た時に真っ先に買おうとするオタクのそれだ。使命感とワクワクがナヒーダを突き動かしていた。つまるところナヒーダは最初から二人の恋を見届けようとしていたのだ。
恋愛なんて稲妻から来た娯楽小説程度でしか読んだことがない。その二次元上の話が三次元、つまりナヒーダのいるテイワットで、さらに身近な人物の間で起こっていることがたまらなかった。
楽しそうに談笑する二人。ふっと昨日の出来事を思い出す。
晒された二人の過去は、かえって二人を引き付けた。これが運命なのか。あの博士でさえ引き裂けぬ運命なのか。
同時に、二度とあのようなことが起こってほしくないと思った。
(だって、今の二人はこんなにも幸せそうで……)
花が綻ぶような笑顔を見て、ナヒーダは静かに両手を合わせた。
(いつまでも、スメールが平和でありますように。そして……)
(二人がいつまでも、幸せでありますように)












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!