第67話

#「あま、い」?
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2026/03/01 00:25 更新




タッ、タッ、タッ、タンッ

乾いた地面を蹴るたび、僅かな砂埃が舞う。



ここだけに強い風が砂を巻き上げ、姿を見せない彼女の痕跡を映し出した。



紫雲翼
   ごめんなさい、   
高校生
ッ!!?!


刹那、
幾つものボールが受験者めがけ、飛び込んだ。

高校生
(こんな数何処からッ‥‥‥!!!)


風によって操られた目にも追えない数のボール。




ものの19秒。
防戦を強いられた時点でもう決着は決まっている。

3つの的はボールが触れたことを示す青色に光っていた。


高校生
………………これは君の仕業?


ふわり

落下したボール同様着地した少女にそう問いた。

紫雲翼
…………。
高校生
じゃあ、これだけ聞かせてよ。
こんな数のボール、何処で集めたの?
その余裕から見て、恐らく俺が「3人目」)


紫雲翼
こんな数ですか?


彼女は拾い上げたボールを見せた。

紫雲翼
4つですよ。
高校生
4?
あんなにあっただろ?
紫雲翼
いや、4つです。


信じられない。どれ程の速さでボールを操作していたんだ。
コントロールがこの子に出来るのか。

高校生
君、どこ高?
紫雲翼
雄英です。


雄英?
体育祭にいなかっただろ?

紫雲翼
……その日、体調不良だったんですよ。


高校生
ハハッ。とんだ隠し玉だね。
本当に、いくら持ってんだよ、雄英は。


雄英なら、この子も1年生だろうな。
年下に、こんなすぐにやられるなんて。くっそ。


紫雲翼
ごめんなさい。


彼女は何に対して謝っているのか。深くお辞儀をして、駆け足で去っていった。



2人目の合格者の放送が響いた。










合格者待機場へ行くと、既に1人男子生徒が居た。


あ!さっき放送あった人ッスね!!
紫雲翼
はい。
紫雲翼
あなたはさっき放送で言ってた1抜けの……
夜嵐イナサ
夜嵐イナサッス!
そっちは?


紫雲翼です。と自己紹介を終わらせる。
そのまま話さなくてもいいんだけど、2人しかいない部屋は少し気まずい。

紫雲翼
夜嵐さん。
夜嵐イナサ
ん?なんすか?
紫雲翼
「120人一度に脱落させた」って本当ですか?
夜嵐イナサ
ほんとですよ。
俺の個性旋風なんスけど、風で思いっきりバァーンって!
紫雲翼
ば、ばぁーん‥‥?


はい!バァーンってブワッてやるんですよ!
と笑顔で返された。




うん。諦めよ。
あたしは気になってたことを質問する。


紫雲翼
でも120人も落とす必要なかったんじゃないですか?
紫雲翼
合格には3人でいいですよね?
夜嵐イナサ
んんー、まあそうッスね。


夜嵐イナサ
でもそれって、






「なんか甘くないですか?」



紫雲翼
え‥‥……、?
夜嵐イナサ
なんて言うか、その、あれだけで落ちる人って、俺がしなくても直ぐに落ちると思うんスよね。
夜嵐イナサ
これは試験ッスから、そういう『甘え』?は要らないと思うんス!











紫雲翼
そ、そっか!





こう返すので精一杯だった。

高校生
あっ!!イナサ、お前早いって!!
夜嵐イナサ
お前は3位か!遅かったな!
高校生
遅くねぇーって!


その後、夜嵐さんはクラスメイトと話し、会話は無くなった。



苦い緑茶を一気に流し込む。
冷たさが下へ、体の中を走り抜ける。





















ぐちゃぐちゃしたものの整理が出来ないまま、第2次試験が始まった。


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