第2話

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2026/02/27 07:53 更新






 寝間着のまま部屋から出て
 離の小屋へ向かう 。

 
 こんな山の奥に立つ屋敷の前を通る子供などおらず
 外を出歩いても人とすれ違うこともない 。



 なので寝間着のまま外に出ることに
 特に抵抗は無かった 。


 そもそも庭を囲む塀のお陰で
 外から中は見えないくなっているので問題は無いが







 カポーン   カポーン






 一定のリズムでなる水琴窟の音は
 私の心に安らぎを与えてくれる 。



 その音を聞いている時だけ 、
 こんな大嫌いな家に生まれたことを
 ほんの少しだけ良かったと思えるから






 離は私の服が何枚か置かれている部屋以外
 全て物置となっている 。



 人も私以外は殆ど来ず 、
 私だけの秘密基地みたいで幼心を擽られたのも
 今でも鮮明に覚えている 。




 昨日 、雨が降ったのか 。

 少しじめっている部屋は
 電球も切れかけで薄暗くしか照らされず 、

 余り手元が見えないのも
 相まって着替えるのに手間取った 。




 『この洋服何回着ても着慣れないわね…
 難しすぎるのよ』




 白衣 … 巫女が着ている服の上半身の白い部分、
 と言った方が伝わりやすいか 。

 白衣を纏ったあと、その上から赤色の服を着る 。



 そのまま 、布のかかった
 大きな塊の前まで足を進めるとそっと布を退かした 。


 線密な模様の掘られた
 何処か貫禄のある木に縁取られた大きな姿見 。




 それはいつも 私 " ではない " 少女を映し出す


 そっと 姿見に触れる 。
 そこに映る少女も 同じ動きをした 。











 「御神木様 、時間ですよ」






 そんな声でハッとした 。



 余裕を持って着替えに来たのに 、
 いつの間にか時間も忘れて
 姿見と見つめあっていたようだ 。


 意識が無理矢理引っ張られたように
 かき混ぜられ 、少しの痛みが脳を叩く 。




 慌てて姿見から離れ 、
 私を呼びに来た信者に大声で分かりましたと
 返事をした 。


 

 「大声は はしたないですよ 。
 では 、 先に向こうで準備をして起きますので」





 唯の1信者がはしたないとか偉そうに …

 そんな気持ちが湧き出てきたので 、
 慌ててガムを噛むように噛み砕く 。




 ガムは噛めば噛むほど味が薄くなる

 それと同じように 、負の思いが薄まるようにと
 ぎゅっと手を握りしめた 。



 ふわりとまた布を被せる 。
 私が触れていた場所に指紋は付いていなかった




 『今日もまた 、虚しい時間が訪れるのね … 』




 いつも通りに進む日常に
 私はもう 、抗う気力すらなかった 。






↬ 神の成り代わりと崇められる少女を
  信者は皆 、 御神木様 と呼ぶ

↬ 身内 、 又は神に近しい役目を持つ人は
  巫女 と呼ぶ

↬ どちらも 恋結 あなた のことを指す

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