昔は、君だってすごく女の子だった。
私と同じようにお人形を持って、私と同じように長い髪を結んで、私と同じようにお姫様ごっこをしたりしたのに。
今や君は、全くの反対に育ってしまった。
私と違ってゲーム機をもって、私と違って髪を短くして、私と違ってどこにでも駆けつけてくれる王子様のように。
私はあの頃から変わらないまま。君はあの頃から変わったまま。
何がどうして、君をそんな風にしてしまったのだろう?
「どうしてやめちゃったの?」
私は聞いた。
あんなに好きだったお人形を手放した君に。
「どうしてやめちゃうの?」
私は聞いた。
あんなに気に入っていた長い髪をバッサリと切ってしまった君に。
「どうしてやめようとしてるの?」
私は聞いた。
あんなに憧れていたお城のお姫様を救い出したいと言い出した君に。
聞いた私に、君は答えた。
「人形より大切なものができたんだ」
問いかけた私に、君は答えた。
「髪が長いとどうしても邪魔だから」
呟いた私に、君は答えた。
「城にいる、君という姫を救い出したくて」
君はそっと私の手を遠慮がちに取った。
自分をどこまでも貫くマイペースな子なのに、こんな時こそ自信を持って言うべきなのに。
君の方が困ったような顔で笑っている。
「俺と、付き合ってくれませんか」
「ずっとずっと、好き、です」
細くて途切れてしまいそうな声だった。
それでも聞きなれた声はきちんと私の耳に届いた。
外見はまるっきり変わってしまったけど、他人に対する態度は変わってしまったけど、私に対する彼女は何も変わっていない。
昔から君は、気の弱い子だった。
「私も好きです!よろしくお願いします!」
指先だけで握られていた手をグッと引っ張って手のひらで包んだ。私よりほんの少しだけ大きくて、不器用で、優しい手。
驚いたように見開く君の目には、昔からなんにも変わらない私が映っていた。
「ずっとずっと、私は待ってたの!」
私は何も変わらなかった。
お人形が好きなのも、長い髪を気に入ってるのも、お城のお姫様に憧れているのも。
ずっとずっと、変わらなかった。
だって君が、私を好きでいてくれるから!
ぜんぶぜんぶきみのためだよ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。