真夏の昼下がり。
庭先の風鈴がチリンと鳴り、
蝉の声がうるさいほど響いている。
屋敷の中は静かで、あなたの下の名前はうちわで顔を
扇ぎながら畳の上でごろりと転がっていた。
無一郎との任務まで、あと少し。
涼しい顔でやってくるであろう幼馴染の姿を
思い浮かべ、ため息混じりにぼやく。
その時___
玄関の戸が開く音がした。
ぱっと顔を上げて立ち上がる。
弾む声でそう呼びながら、廊下を駆け抜けて
玄関まで行き、勢いよく戸を開け放った。
__そこに立っていたのは、無一郎
ではなかった___。
真夏の陽射しの下で、にっこりと笑う___、
____私の元彼、童磨。
現実を理解するより先に、喉が凍りつく。
童磨は涼しい声で言いながら、
一歩、また一歩と近づいてくる。
その足音がやけに軽くて、余計に恐ろしい。
チリン……と、玄関先の風鈴が鳴り響く音が、
いやに澄んで聞こえた。
童磨の瞳は、笑っているのに底が見えないほど冷たい。
背筋を伝う汗が、暑さだけのせいじゃない
童磨の声がやけに柔らかく、
余計に逃げ場のない恐怖が押し寄せる。
その時__
背後から涼やかな声がした。
振り返ると
玄関の外から無一郎が歩いてくるところだった。
その瞳が童磨を見据えた瞬間、
空気が一気に張り詰める。
無一郎の低い声に、童磨はにこりと笑みを深めた。
風鈴が鳴る音だけが、やけに鮮明に響いた。
# . ドアを開けたら、元彼がいた話
♡ 𝐬𝐭𝐚𝐫𝐭
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。