何処に向かってるかなんて俺も分からない
息を切らしても、足がもつれそうになっても
目の前が霞んでも
それでも、走り続けるしかなかった
俺が俺である為の方法なんて
こんな事しか思い浮かばなかったから
風景が少し変わり
何処かへと向かう足が自然に止まっていく
周りを見渡すと、いつの間にか森から少し開けた場所にいた
どこかで見たような……
そう思いながら辺りを見回し
何処かに目印の様なものを探そうと一歩を踏み出す
だが、身体がよろめいてあらぬ方向に身体がそれる
そのまま、近くにあった木にもたれかかってため息をつく
自分で納得していると
額に冷たい何かが伝っていく
生い茂る葉の隙間から空を見上げると
月の光は見えず、代わりに薄暗くなった空から
大粒な雫が緑を伝って降り注ぐ
痛む身体を起こし、髪を端に避けると
視界が悪い中、何かが見えた
何を考える訳でもなく
ただその方向にふらつく足でゆっくりと進む
容赦なく打ちつけるそれは
届くことなく散った
誰かの祈りの残り香のような気がした












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!